コロナでバイト5人に「暇」でも飲食店経営にこだわる理由
「行けるわけないでしょうが! 自粛でしょ、やってんの、お店?」
受話器越しに、お客さまの怒声が鼓膜に突き刺さりました。都の営業自粛要請でキャンセルが殺到し、休業も考える中、残る1組、4人でのご予約を入れていただいていたお客さまをお迎えしようと、準備を整えてお待ちして約1時間が経った頃、再確認のお電話をしたときのことです。キャンセルのご連絡もない上、仕事してるそちらが悪いという言われ方をされてしまい、手が震えました。
東京は恵比寿で「馬肉屋たけし」という、小さな飲食店をはじめて12年。日夜、不安で仕方ありません。悪いのは未知の殺人ウイルスで、お客さまも大変な思いをされている。
ただ、こんな時であっても、店を開けなければならないお店は少なくありません。家族やスタッフの生活が立ち行かなくなるからです。外で働いている会社員、現場関係の皆さんとか、きっとボクらと同じような思いをされていると想像し、恐れながら、まずそのことから、実情をお伝えすることにしました。
ボクがお店の経営にこだわる理由は、売れない時代にさかのぼります。努力しなければ明日はありませんから、オーディションを受け、ライブに呼んでもらえたら飛んでいく。少ないチャンスを掴もうと必死でした。でも困ったことに、それらは突然決まることが多く、すぐにアルバイトをクビになってしまう。それでまた駄目かと怯えていると、居酒屋の店長さんはこう言ってくれたんです。