エリザベス女王の国葬で訪英 天皇が葬儀に参列するのは異例なこと
天皇が葬儀に参列するのはめったにない。それは、古くから続いてきたケガレ思想が影響していると言われる。安倍元首相の「国葬」などには侍従などを使者として遣わすのが慣例になっているのもそうだ。明治以前は葬儀に参列することは皆無だったが、近代化にそぐわないということでゆっくりと改革され、明治天皇の大喪で大正天皇が初めて葬儀に参列している。その後、大正天皇が亡くなる数カ月前に皇室喪儀令ができたが、天皇が葬儀に参列するのは、先の天皇や皇太后など近親者に限定していた。だから国民の感覚とはずいぶん違っている。戦後もこれを踏襲してきたのだろう。
では上皇ご夫妻がなぜ異例ともいえるベルギー国王の国葬に参列されたのか。それはさらに40年前にさかのぼる。1953年、当時19歳の皇太子だった上皇さまは、エリザベス女王の戴冠式に参列するために訪英したが、当時は第2次世界大戦から8年しか経っておらず、敗戦国の日本からやってきた皇太子ということで英国社会は冷淡だったようだ。式で用意されたのも末席だった。もっともエリザベス女王らは手厚く迎えてくれたという。
その後、欧州各国や米国を約半年かけて訪問したのだが、この中でベルギーを訪問した日々が最も楽しかったと、上皇さまは述懐されている。旧敵国の皇太子を古くからの友のように歓迎してくれたようだ。さらに昭和天皇の大喪の礼では、国内世論を考えて、ヨーロッパの王室から参列したのは皇太子などだったが、ベルギーは国王が自ら出席した。そんなことが、これまでの慣例を破って上皇さまがベルギー国王の国葬に参列された理由だろう。では、天皇陛下がエリザベス女王の国葬に参列するのはどんな理由だろうか。