萩本欽一が83歳にして新境地に挑む コメディアンの転機となった「熱海のホテル」秘話

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予期せず結成したコント55号

 そんな萩本のターニングポイントは、熱海の温泉ホテルでコメディアンとして働いたことだった。公開コメディー番組での生CMに起用されるもNGを連発して降板。その後も鳴かず飛ばずだった萩本に、芸人仲間が「いい仕事あるんだけど」と紹介してくれた。

 熱海では、毎日のように海を眺めた。荒々しく押し寄せて来る波を見ていると、テレビ番組で怒られた辛さを思い出す。ただ、波はそれ以上自分をイジめたりせず、ス~ッと去っていく。2007年放送の「100年インタビュー」(NHK BSハイビジョン)の中で、萩本は「それ見てるとね、少しずつ勇気出て来るんですよ」と語っている。

 2カ月ほど滞在する中で、後に代表作となるコント「机」を思いつき、東京に戻ることを決意。いざアパートに到着して間もなく坂上から連絡が入り、お互いに似た境遇だったことを知って意気投合する。

 連日のように会う中、何気なしに萩本が一人で机の脚を切っていくコントのアイデアを伝えると、坂上から「誰かが切ったほうがいい」と提案され、予期せず協力してもらうことになったという。予定調和を崩す職人である萩本らしいリスタートだったと思えてならない。

(鈴木旭/お笑い研究家)

  ◇  ◇  ◇

 昭和の大芸人・欽ちゃんについては【関連記事】や【写真】を参照。

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