孤独のキネマ
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「十階のモスキート」現役警察官が落ちたサラ金の泥沼地獄
内田裕也が「水のないプール」(1982年)に続いて映画主演を務めた問題作。崔洋一の監督デビュー作でもある。 舞台は千葉県君津市。交番に勤務する男(内田)は妻に愛想を尽かされて離婚し、悶々とし…
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銭ゲバ男が好奇心から巻き込まれた命からがらの「ゲーム」
「サービスデザイン推進協議会」の事務所の一件は面白かった。当初はテレワークという理由で事務所が閉じられていたが、野党議員が視察に訪れた日は数人が働いていた。ところが翌日はガードマンがいるだけで、またも…
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「デトロイト」白人警官&軍隊が黒人青年をリンチした一夜
黒人男性が警察官の暴行で死亡したことに抗議するデモが米国やヨーロッパなどで起きている。デモ隊の一部が暴徒化し、トランプ大統領は一時、軍隊の出動まで口にした。米国映画にはこうした差別による暴動を背景に…
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「シザーハンズ」男と木村花さんは集団ヒステリーの犠牲者
女子プロレスラー木村花さんの死が社会問題になっている。SNSの誹謗中傷に傷ついて死亡したとされ、政界ではネットの表現を規制する動きも出てきた。木村さんの悲劇から思い出したのがこの「シザーハンズ」だ。…
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「手紙は憶えている」認知症老人のアウシュビッツ復讐の旅
筆者はホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の映画はなるべく見るようにしている。「シンドラーのリスト」「サウルの息子」「否定と肯定」などこれまで数多くの問題作が製作された。この「手紙は憶えている」はホロコー…
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「ドローン・オブ・ウォー」通勤型戦闘員が抱える苦悩
原題は「Good Kill」で、劇中では「一掃した」の意味。無人攻撃機を描いているため、この邦題にしたのだろう。米国にいながらアフガニスタンの上空を飛ぶ攻撃機を操縦する将校の物語。事実を基にしている…
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「チャーリー」世界笑わせた喜劇王の人生につきまとう悲劇
志村けんが急死し、テレビ各局が追悼番組を放送した。録画しておいたそれらの映像を巣ごもり生活の中で見ているうちに本作を思い出した。チャーリー・チャップリンは志村けんが尊敬する喜劇人の一人だったという。…
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「静かなる決闘」感染症で人生狂わされた青年医師心の叫び
新型コロナの蔓延で、医師や看護師ら医療従事者の子供が「学校に来るな」「公園は立ち入り禁止」と偏見の声を浴びている。大人までがネトウヨじみた妄言を吐いているのだ。日本人の愚劣化もここまできたかと呆れて…
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「南極料理人」ラーメンが食べたくなる究極の巣ごもり映画
新型コロナで家に閉じこもっていたら、本作を思い出した。南極基地で働く隊員の暮らしこそ究極の巣ごもり生活。料理人の目を通して地の果てで生きる男たちを描いたコメディーだ。 舞台の「ドームふじ基地…
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「ダイ・ハード」“米国買い”の象徴で奮闘する刑事に興奮
日本公開は89年2月。もう31年になる。早いものだ。 ニューヨーク市警の刑事マクレーン(ブルース・ウィリス)はロサンゼルスに到着し、別居中の妻ホリー(ボニー・ベデリア)が勤めるナカトミ・コー…
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狂乱の時代…「バブルへGO!!」 団塊世代は心して見よ!
今から30年前の1990年、バブル経済がはじけた。本作はその時代にタイムスリップして日本の崩壊を食い止めるコメディー。 2007年、母の真理子(薬師丸ひろ子)に自殺された真弓(広末涼子)は財…
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「感染列島」が予見したコウモリの毒性と人工呼吸器不足
志村けん(70)の死は感染症の恐ろしさをまざまざと見せつけた。新型コロナの猛威が強まる中、思い出したのがこの「感染列島」だ。 2011年、東京・いずみ野市の市立病院に急患が運び込まれ、医師の…
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「ラストタンゴ・イン・パリ」中年男と美しい妻の禁断の愛
男女の特異な性愛を描いた衝撃作。 パリで安ホテルを営むポール(マーロン・ブランド)はあるアパルトマンの空き部屋で見学者のジャンヌ(マリア・シュナイダー)と出会い、その場で性交する。ジャンヌは…
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ただの西部劇にあらず ドンパチに隠された「赤狩り」批判
本作は1970年代によくテレビ放映され、筆者は中学時代に見た。その時はただの西部劇だったが、実は政治的テーマを持つ。赤狩りへの批判だ。 主人公は新妻エイミー(グレース・ケリー)と結婚したばか…
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米国版「深夜食堂」ある男の1週間がコミカルでやみつきに
ジム・ジャームッシュはよく分からないけど、この映画はいい。 ニュージャージー州パターソン市に住むバス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)は単調な日々を送っている。毎朝、妻のローラ(ゴルシ…
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「ヒトラー~最期の12日間~」妄想と怒声…独裁者の末路
ヒトラーの自決を描く。ブルーノ・ガンツの演技が凄い。 1942年、22歳のトラウドゥル(アレクサンドラ・マリア・ララ)はヒトラー(ガンツ)の秘書採用試験に合格。彼女を主要人物のひとりとして物…
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「ELLE」父親のトラウマを引きずる女 性欲と葛藤する物語
主演のイザベル・ユペールは1953年生まれ。本作の公開時は63歳で、ゴールデングローブ賞主演女優賞に輝いた。レイプの映画でよくぞ頑張った。 ミシェル(ユペール)は離婚歴のあるゲーム開発会社の…
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朴槿恵が危険視…階級闘争を暴力的に風刺した問題作
ポン・ジュノ監督が「パラサイト 半地下の家族」でアカデミー賞を取ったことで改めて注目されたのが朴槿恵だ。大統領時代、この「スノーピアサー」が抵抗運動をあおるとの理由で同監督を文化芸術界のブラックリス…
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80年代は絵空事だったAI殺人ロボットの恐怖を見事に予言
A・シュワルツェネッガーとJ・キャメロン監督の出世作。 2029年、地球では人類VSロボットの戦争が繰り広げられていた。ロボット軍団を追い詰めた指導者の誕生を阻むため、1984年の現代にアン…
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第15回日本アカデミー賞最優秀作品賞「息子」は父親の物語
東京の居酒屋で目標もなく働く哲夫(永瀬正敏)は母の一周忌で岩手に帰省。長男夫婦は一人暮らしの老父・昭男(三国連太郎)を引き取るべきかを議論し、哲夫は父に生き方を批判されてふてくされる。哲夫は帰京し、…