五木寛之 流されゆく日々
-
連載11740回 野球の「アレ」「これ」 <2>
(昨日のつづき) 38年ぶりの日本一とあって、大阪の過熱ぶりは大変なものらしい。 道頓堀川にアレしたファンが38人もいたそうだ。なかには一人で何回もアレした猛者もいたという。その心情はわからな…
-
連載11739回 野球の「アレ」「これ」 <1>
今年はWBCの劇的な優勝、阪神タイガースの38年ぶりの「アレ」と続いて、最近やや沈滞気味のプロ球界に、カンフル注射を打ったような活気がよみがえったシーズンだった。 サッカー、ラグビー、バレー、バ…
-
連載11738回 「今週読んだ本の中から」 <5>
(前回のつづき) この本の凄さは、本文の後につけられた密度の濃い厖大な「注」の部分にもある。 「注」といえば内容を補足する索引のようなものだと思っていたが、『ジャズピアノ』の注はそんなものではな…
-
連載11737回 「今週読んだ本の中から」 <4>
(昨日のつづき) 私は『ジャズピアノ』の上巻だけを走り読みして、過剰なアルコールを摂取したかのような酩酊状態におちいった。 モラスキー氏の文章は解説ではない。読む人を酔わせる純度の高い文章によ…
-
連載11736回 「今週読んだ本の中から」 <3>
(昨日のつづき) この本はまだ上巻が出ただけである。それでも、一読して何かを書かずにはいれない衝撃を受けたのだ。 おそらく下巻が発売されたあかつきには、しかるべき専門家の書評が連続するだろう。…
-
連載11735回 「今週読んだ本の中から」 <2>
(昨日のつづき) この本が私にとって衝撃的だったのは、これまで数多く刊行されてきた、いわゆる<ジャズ入門>や<ジャズ評論>とは全くちがう新しい性格の本だったからだ。 オビの文句には「最新の研究…
-
連載11734回 「今週読んだ本の中から」 <1>
この本をもし私が若い頃に読んでいたなら、決してジャズ小説など書かなかっただろう。そのかわり、熱烈なジャズファンとなり、作家ではなく、ささやかなジャズの店の経営者をめざしたかもしれない。 私はジャ…
-
連載11733回 五木流養生の実技 <10>
(昨日のつづき) きょうは午後からNHKのスタジオで『ラジオ深夜便』の録音。 思えばはじめてラジオで喋ったときから、すでに60年以上が経過している。<ラジオ深夜便>も、もうこれでどれくらいたつ…
-
連載11732回 五木流養生の実技 <9>
(昨日のつづき) 左脚の不調のほかに、いま私にとって気がかりな点は、喉になにやら腫れものができていることだ。ポリープという感じでもなく、食べものを飲みこむにしても、さほど抵抗があるわけでもないので…
-
連載11731回 五木流養生の実技 <8>
(昨日のつづき) ここで、ちょっとお詫びを。 前々回の記事で、まぎらわしいところがあるので、あらためて記す。 扁平足の足裏は、親指側、つまり内側がぽってりと肉厚になっている。本来、足裏の内…
-
連載11730回 五木流養生の実技 <7>
(昨日のつづき) 体との対話、というのが私のもっとも大事にしている養生の第一歩だ。 体は、絶えず私たち本人に語りかけている。いわゆる言葉とはちがう<身体語>を通じてである。 私たちは英語と…
-
連載11729回 五木流養生の実技 <6>
(昨日のつづき) この連載は、ほぼ5回で一区切りというのが定番である。1週間ごとにテーマが変るのが、決まりというわけではないが、長年の習慣になっていた。 今回は例外的に2週にまたがることになっ…
-
連載11728回 五木流養生の実技 <5>
(昨日のつづき) この10年来、私にとっての悩みの種は、下半身、すなわち脚部の不自由である。 何年か前に、<変形性膝関節症>と診断され、その後さらに<変形性股関節症>もあると言われた。歩くと脚…
-
連載11727回 五木流養生の実技 <4>
(昨日のつづき) 体、すなわち身体は、絶えず私たちの心に向けて信号を発している。 それは普通、わたしたちが使用する言語とは違う言葉である。 いうなれば<身体語>とでも呼べるような信号である…
-
連載11726回 五木流養生の実技 <3>
(昨日のつづき) いまどきの人々の抱えている問題、不安といってもいいが、それを<3K>と呼んだことがある。 <3K>とは、いまは過去の流行語になってしまった言葉だ。下位労働者の仕事の現場を端的に…
-
連載11725回 五木流養生の実技 <2>
(昨日のつづき) 五木流養生の実技、などと偉そうな看板をかかげたが、実のところ単なる病院嫌いの言い訳にすぎないことは、読者諸子もお見通しだろう。 要はこの歳になっても、レントゲン撮影や注射やら…
-
連載11724回 五木流養生の実技 <1>
思いがけず91歳まで生きた。 もう十分だろうと自分でも思うが、それでも一日でも健康に暮したい。痛みを抱えて、辛い思いをしながら生きるのは真平だ。 とはいうものの、加齢とともに体の各部に故障が…
-
連載11723回 言葉は時代とともに <4>
(昨日のつづき) もう何十年も昔の話である。一通の手紙が届いた。差出人は知らない人である。 本を読んだ人が感想を書いてきたのだろうとも思ったが、なにやら不穏な感じがした。和紙の封筒に筆書きの文…
-
連載11722回 言葉は時代とともに <3>
(昨日のつづき) 言葉の意味が時代によって変ってくるのもそうだが、もう一つ気になることがある。 それは話すスピードだ。これを何といえばいいのか。<話速>とでも勝手に呼んでおくことにしよう。 …
-
連載11721回 言葉は時代とともに <2>
(昨日のつづき) 私が新人賞をもらって作家としてデビューしたのは1966年の春のことだった。実際にその小説を書きあげて新人賞に応募したのは1965年の秋である。 1967年になると、当時の中間…