熟読乱読 世相斬り
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【他人の靴を履く】12歳の少年が粘り強く差別と偏見に対処していく
子育て本というと、出来の良い立派な子を育てました的な話だったり、逆に深刻なトラブルを抱える境遇からの脱出話だったり、読み手は「素晴らしいご教育ですね」と褒めるか、「ほんとうに大変でしたね」とねぎらう…
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【わしは神さまだぞ。】出だしからうっとりする酩酊小説
お化けもいろいろで、前回書いたように日本のそれは「あはれ」を感じさせる存在だったりするが、場所がアフリカだとお化けはリズミカルでファンキーになる。そんなお化けがわんさか登場するのが、ナイジェリアのヨ…
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【あはれ】怖さよりも哀しみを感じる小泉八雲を秋に読む
9月である。暑いとはいえ、朝夕はいくぶん秋の涼風を感じることができるようになった。こういう頃合いになると、私はなぜか怪奇物を読みたくなる。 「怪談は夏」という、江戸時代後期の歌舞伎関係者が世間…
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【#Me Too異邦人?】似て非なる“異邦人”が話題になる荒廃
殺人を犯した動機を尋ねられて、〈それは太陽のせいだ〉と答える。今では、そんなセリフは、陳腐なお笑いコントのように感じられてしまうかもしれない。しかし、アルベール・カミュが1942年に「異邦人」を発表…
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【戦争と青春】人生を極限にまで軽視する戦争の本性
大学生の17%は8月15日が何の日であるのか知らない、と有名ブロガーの「きっこ」氏が書いていた。なるほど、さもありなん、と思いつつ、でも、8割以上は知っているんだから上出来かも、と、つい低め設定の思…
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【戦争と検閲】権力が分水嶺を越えるかどうかの瀬戸際
白状しておく。石川達三の作品を、ほぼまったく読んでいないのである。彼の小説を原作にした映画「金環蝕」とか、「青春の蹉跌」などは見ているが、それでなにか読んだような気になってしまい、あらためて原作に目…
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【人間ぎらい】「暗くてあたたかい」諦念に登場する男たち
私の場合、フランソワーズ・サガンを取り上げたからには、次はどうしたって田辺聖子なのである。これについては、両者の文学的関係性やら、ごく私的理由やらいろいろ説明できるのだが、長くなるので省きます。ひと…
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【ヴァカンス】自分を許し他者を傷つける少女は私たちの鏡
フランソワーズ・サガンの処女作「悲しみよこんにちは」には、夏のヴァカンスのにおいがこもっている。18歳のサガンは1954年、この作品をひっさげて彗星のごとくフランス文壇に登場し、一躍スターダムにのし…
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【盗賊】「がんばれ香港」と声援したくなる中国の盗賊支配
中華人民共和国は、とらえどころがない国だ。そもそも、いわゆる「国民国家」であるのか疑問である。共産党による一党独裁体制なのに、少なくとも毛沢東以降、マルクス主義はただの看板になっているようでもある。…
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【外側vs内側】コスプレの安倍首相に対し憑依型の山本太郎
webマガジン「現代ビジネス」に、政治学者・中島岳志とライターの武田砂鉄両氏による対談が載っていて、なかなか面白い。中島氏の新著「自民党」をめぐっての話なのだが、安倍首相の言説は「反左翼」で統一した…
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【居場所】この社会で居場所がないのは元暴力団だけではない
大学では、通常の講義やゼミ以外に、教員が工夫を凝らした特別授業を開くことがよくある。こういう授業は基本開放的で、学内の人間はもちろん、学外の人でも自由に参加できる場合が多い。つい先週も、人権論の講義…
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【食と友好】食は友好の道具だが一つ間違えると怖い
梅雨の季節には、前回ご披露した小バエより、さらに困ることがある。自分自身の体調が、それだ。この時季になると肩凝りならぬ全身凝りになったり、風邪をひくといっこうに治らなかったり、さまざまよろしくない。…
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【分別】夏場のゴミ出しは清掃車が来る直前にしよう!
じめじめ蒸し蒸しの梅雨が最盛期をむかえると、私の不倶戴天の敵が台所管区ゴミ箱方面において発生し始める。コヤツは、こちらがいい機嫌で晩酌している時ふいにあらわれ、グラスに自殺的飛び込みを敢行し、注いだ…
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【棄民】この国で行われた棄民は遠い過去の出来事ではない
今年は、小説家・開高健没後30年の節目ということもあり、彼の文業が次々に復刊されている。年来開高ファンであると公言してきたおかげで、私も岩波文庫「開高健短篇選」の編者を仰せつかり、1月に無事刊行する…
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【密約】トランプのツイッターで騒ぐ前に日本の自立を考える
5月は、アメリカ大統領への手厚い「ご接待」で幕を閉じた。それにしても、トランプ氏の来日にはいろいろ(気分が良くない)見どころが多かった。新天皇ご夫妻が、彼の滞在先のホテルまでわざわざ離日の見送りに出…
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【子どもの詩】あのホワイト企業の知られざる文化的偉業
北海道土産でお菓子といえば、多くの人がまず六花亭を思い浮かべるのではないか。安心感のあるおいしさのマルセイバターサンドが有名だが、日本で初めてホワイトチョコを開発・販売したのはここであり、手頃な「お…
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【ハレンチ】某国会議員は真実を知る前の「イキドマリ君」なのだろう
先日、同い年の知人と飲みながら、小学生時代にやったイタズラの話などをしていた時のこと。当時一世を風靡(?)した、そして、私もヒジョーに身に覚えがある「スカートめくり」の話題がでた。知人は、「あれって…
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【移民】ベルギー国籍で移民だったG・シムノンの面目躍如
連休が明けてすぐ、自宅から一軒おいて隣にある家屋が取り壊された。その音と振動で5日ほど少々落ちつかなかったが、書斎の窓から眺める作業風景には、ちょっと気を惹かれるものがあった。というのは、解体作業を…
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【市場社会】未来のために自らが経済を運営する意識が必要
このところよく売れているという『父が娘に語る経済の話。』を読んだら、ちょっとビックリした。数学が多用される経済学は、さっぱりワカリマセン、という当方にとって、さまざま心強いお言葉が記されているではな…
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【卑弥呼】古代の女性天皇、首長のイメージが一変
日頃、日本の古代史に関する面白そうな本には、なるべく目を通すようにしている。『古事記』を扱う授業をここ10年ほど大学で開講してるので、それに役立つかもという下心があるのがひとつ。だが、やはり一番の理…