熟読乱読 世相斬り
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【旅はのんびり?】内田百閒先生はリニアに乗りたがるか
環境アセスメントの問題で、リニア新幹線の2027年開業が危うくなっているようだ。品川―名古屋間を40分で結ぶというのだが、「のぞみ」だって90分くらいで同じ区間を走るのだ。50分の差にどれほどの意味…
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【アメリカン・サーガ】まずは文庫の解説から読んで欲しい
先日、アメリカの大手動画配信サービスが映画版「風と共に去りぬ」を配信停止にしたというニュースが報じられた。奴隷制に立脚していたかつての南部アメリカを美化し、黒人をステレオタイプで描いている、という批…
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【政治家】私たちはなぜ君を総理大臣にできないのか
今週は書籍ではなく、現在上映中のドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」をご紹介したい。いろいろな意味で考えさせられる作品だ。 主人公は、現職の衆議院議員である小川淳也氏。32…
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【賭博と階級】賭博法と公営ギャンブルの奇妙な共存の歴史
以前「麻雀放浪記」を取り上げた時にも書いたが、私はまったくの麻雀オンチである。まあ、さすがに麻雀で金銭を賭ける行為については知っている。しかし、それはあくまで「知っている」程度であり、そもそも賭け事…
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【贅沢】堅くて重い本を開いた時のうっとりするような時間
前回に引き続き、わが「食い気過多」人生の思い出をもう少し。 子供の頃、年に一度の誕生日に、普段は行けないような洋食店とか中華料理店などへ、親が奮発して連れていってくれるのが楽しみだった。さら…
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【「旨さ」を未来に】辻静雄さんの功績に思いを馳せる
緊急事態宣言の間、SNSはいつにも増してにぎやかだった。なかでも私が目を引かれたのは、営業自粛や時短営業をしている料理店のシェフたちがアップする、見るからに旨そうな料理写真や動画だった。かつてない苦…
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【共産党】国会中継を見て「共産党宣言」の新訳を再読した
国会中継を真面目に見るなど、若い時分から最近まで、したことはなかった。だがここ数年、かなりの苦痛をこらえつつも、強いて視聴するようにしている。なぜ見るのかといえば、これは現政府への不信感が非常に強い…
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【三権分立】モンテスキュー「法の精神」と対比できようか
このコラムの書き方は、基本的にふた通り。メインのやり方は、時事的な事柄と呼応する書物を選んで書くというもの。もうひとつは、単に自分の好きな本を気分次第で紹介する方法。しょっちゅう切羽詰まるが、まあこ…
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【生涯現役】「ちょっと走ってみるか」と思う読後感の晴朗
海で泳いだり素潜りしたりするのは好きだが、プールで黙々と遠泳するといったことが昔から苦手だ。克己心の持ち合わせがないのである。したがって、運動不足の解消にスポーツジムなどに通っても、三日坊主。ここ数…
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【ゴー・ホーム】65年前に書かれたSFに学ぶ侵略者への対処
「ステイ・ホーム」と言われると、私の場合反射的に「ゴー・ホーム」という言葉を連想する。その理由は、高校3年の時以来愛読・再読しているSF小説が、この言い回しをタイトルに使っているからだ。フレドリック・…
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【滅私奉公】殉ずるのは君命ではなく困難に直面する人々
前回に引き続き、まずは「奸臣」から。小説や芝居で、「奸臣と見えていたが、実は忠臣」というストーリー運びはけっこうある。山本周五郎は、この種のお話の名手だった。代表作の長編「樅ノ木は残った」などはその…
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【権力と情緒】国家の命運を握る者に必要な資質は何だろう
歴史マニアの人たちに、奸臣・佞臣ワースト10などというアンケートに答えてもらったとしよう。あくまでも私見だが、秦王朝の始皇帝と2世皇帝・胡亥に仕えた趙高は、きっとかなり上位に食いこむのではないか。 …
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【快活の力】過酷な運命の中、語られるアモーレとエロース
前回はカミュの「ペスト」を取り上げたが、かつて大学でイタリア文学を学んだ者としては、ペスト文学の嚆矢ともいうべきボッカッチョの「デカメロン」を素通りするのは気が引ける。ということで、14世紀イタリア…
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【パンデミック文学】哲学と社会経済的視点で考える感染症
コロナウイルスの蔓延は、いよいよ首都圏封鎖も視野に入るという話になってきた。誰にとっても未体験のこの状況、現段階では実感もないので、家にこもって本でも読んでるしかないか、という灰色っぽい中ぶらりんな…
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【納得して死ぬ】哲学者とヨーガ行者が語った生と死と不死
何かにつけてむやみに腹が立つ今日この頃だが、私に関する限り、これは今に始まった話ではない。少なくとも成人して以降、いつも腹を立てたり苛立ったりしてきた気がする。父親もそんな感じだったから、まずは遺伝…
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【古代と暮らす】古文書を読み解きながら現人神の謎に迫る
前回は「古事記」にまつわる内容だったが、今回も引き続き神さま関連の話を少々。3月の初旬、諏訪湖周辺に足を運んだ。建御名方神にまつわる場所をじっくり見ておこうと思ったからである。このタケミナカタ、「古…
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【詔り直す】国民が抱くコロナへの疑心暗鬼のルーツを古事記に見た
コロナウイルスのニュースが、相変わらず全メディアを毎日埋めつくしている。パニックを起こす火種をせっせと供給しているようにも見えるが、病気の実態にまだ曖昧な点が多いというのが、ワールドワイドに恐怖をも…
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【存在不安】つげ義春は人間が持つ暗い穴への案内人
先日、漫画家のつげ義春さんがフランスの国際漫画祭で特別栄誉賞を受賞した。そのニュースを見た時には、私はちょっと意外に感じた。もちろん、つげさんが受賞したこと自体にはなんら意外性はない。むしろ国際的に…
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【小市民式放蕩】そこには恥じらいと後ずさりがあった
滝田ゆうの漫画を初めて目にしたのは、たぶん12、13歳ごろのことだ。平凡社の「月刊太陽」に色鮮やかなグラビアで載っていたものを見た、というのがおぼろな記憶。どんな内容かは覚えていないが、うりざね顔と…
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【事実を見る】根拠のない希望と不安を持たず世界を見よう
まずはクイズを3つほど。 〈世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう? A…約2倍になった B…あまり変わっていない C…半分になった〉 〈世界の平…