著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

12月8日は国家が国民を煽った日 若者は知らないままだが…

公開日: 更新日:

 そんな危ない国と軍事同盟を結んだのが日本だ。ドイツは戦争に勝つだろうという願望と見込みだけで政治をする政府だった。同盟は米国を怒らせる。41年7月、日本が仏領インドシナに皇軍を進駐させると、米国は資産凍結と石油禁輸制裁を発動し、9月の御前会議で「日米で交渉が妥結しなければ開戦だ」と決めて、「戦争しなければ陸軍に反乱が起きる」「国民は開戦を希望してる」という話も天皇に伝わる中、大東亜共栄圏の建設を唱えながら戦争に突入する。東南アジアに進軍して資源を漁り、神社と鳥居まで造って、日本は国民に何の夢を見させるつもりだったのか。

 連合艦隊の山本五十六長官は映画「トラ・トラ・トラ!」でも「三国同盟は反対だったが、戦えと言われれば初めの1年かは暴れてみせましょ、でも長引くなら確信は……」と言いながら、軍令に従って真珠湾攻撃を指揮した。しかし、国力の全く違うアメリカに奇襲などしたら、とことんやり返されることぐらい、賢い者なら分かっていただろうが。開戦を止める勇気ある政治家も誰一人いなかったのだ。

 結局、日本は1年どころか半年後のミッドウェー海戦で大敗し、後は泥沼だ。餓死、全滅玉砕、空襲、原爆で国民数百万人が命を落とした。敗戦で国民は神とフィクションの世界から目を覚まされて、また、ラジオからは時の首相が「軍官民、国民全員が反省して懺悔しなければ……」と演説した。「何が一億総懺悔だ! オレは戦争なんか知るかよ」と闇市の屋台でドブロクを飲んで当たり散らす者もいたとか。

 正義のため、国益のためと、神の国は戦争を起こした。12月8日は国家が国民を煽った日だ。若者は知らないままだが。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発