73歳で逝った佐川一政さんから届いた「佐川君からの年賀状」には「助けてください!」と
運ばれてきた肉団子を食べる姿を見て、動揺を抑えられず、間を持てなかったのか、とっさに思いついたのが小説を書いてもらうことだった。
佐川さんは小説の依頼を快諾してくれたのだが、この日のことは強烈な記憶として残った。
何日かして佐川さんは数回分の原稿をFAXで送ってくれたのだが、内容は事件を彷彿とさせるものだった。小説を担当しているデスクに伝えるとやはり渋い顔をしている。なので、佐川さんには「この内容ではウチで連載するのは無理かも」と電話で伝えるしかなかった。
その後、来社もあったり何度か会社に電話があったりしたが、やはり無理という判断で結局、小説は掲載できなかった。申し訳ないが、ボツになった。
そしてその翌年の正月のこと。佐川さんから年賀状が届いた。「佐川君からの手紙」ならぬ「佐川君からの年賀状」である。そこには新年の挨拶とともに一筆添えてあった。
「助けてください!」
暮らしに困っていたのだろうか。佐川さんは実際に会ってみると、猟奇的な事件を起こしたとは思えないほど温厚な人で、その胸中を察するしかなかった。