トップブランド100社に スバルの北米人気を支えるプロの技
「Best Global Brands」で初のトップ100社入り
世界最大のブランディング会社「インターブランド」(米国)が2000年から毎年発表している「Best Global Brands」。海外売上高比率が30%を超える企業を対象に、そのブランドが持つ価値・評価などを金額に換算しランキング化したリポートだが、去る10月4日、2018年のトップ100が発表された。
アップルとグーグルが6年連続で1位、2位を獲得。ブランド価値を大幅にアップさせたアマゾンが、2017年の5位から3位に上昇、トップ3を世界的なテクノロジー・ブランドが占めた。日本企業は8社がランクイン。トヨタ自動車が昨年に続き総合7位で、自動車メーカーでは15年連続首位、そして日本企業でも最上位だった。そしてホンダ(20位)、日産(40位)、キヤノン(55位)、ソニー(59位)、パナソニック(76位)と続き、任天堂が99位と4年ぶりにトップ100社に返り咲いた。
■日本車ブランドでは5社目
さらには、北米での販売が好調なスバルが100位に入り、初のトップ100社入り。日本車ブランドとしてはトヨタ、ホンダ、日産、レクサスに次いで5社目で、インターブランドも“今回の注目ブランドのひとつ”として特筆している。
同社はスバルのランクインを、「売上高が年々上昇し, 特に北米での売上および存在感が増している。Subaruブランドのコンセプトは“安心と愉しさ”。“アイサイト”や“水平対向エンジン”で“安全”を、そしてスポーツブランドの“STI”で“愉しさ”を具現化し、消費者にブランドを『体験』として提供している。このブランドコンセプトはEV(電気自動車)の新時代でも継承されることにより、ブランド体験の一貫性と、その強化が期待される」と評価した。
このところのスバルと言えば、過去1年間に完成車検査やブレーキ検査で複数の不正が発覚した問題に対しリコールを発表するなど、いくつかの問題を抱えていただけに、初のランクインは弾みとなる。インターブランドジャパンの並木将仁社長も発表に際し、「不正検査の影響はどちらかというと日本国内の問題。それがあるから海外でスバルを買わないかというと、影響はそれほど大きくはない」と語った。
感動確実!「SUBARUテックツアー」に行ってみた
インターブランドが今後スバルに期待する「ブランド体験の一貫性と、その強化」については、実はスバルは「SUBARUテックツアー」を行っている。メディアを対象とした取材会ゆえ意外に知られていないが、“現在のスバルを知る”をテーマに普段はなかなかお目にかかれない技術的な一面が経験できると、すこぶる好評だ。最近もっとも興味深かった、自動車専用貨物船への積み込み作業をリポートしたい。
見学したのは、神奈川県川崎市にある「東扇島物流センター」。スバルが海外市場向けに車両の積み込みに使う、国内5カ所の輸出港のうちの1つだ。北米市場専用の輸出拠点でもあり、5万平方メートルという国内最大規模の敷地内には、最大6000台ものスバル車がプールできる。
見学会の当日、スバル車を待っていたのは、2011年3月に竣工したバハマ船籍の自動車専用貨物船「バイオレット・エース」。全長189.3メートル・全幅32.26メートル・総トン数4万9708トンで、小型車なら5031台が積載可能だという。3400リッター・6気筒2ストロークディーゼル・エンジンは1万8000馬力。なんとこの日積み込むスバル・フォレスターの約100倍に相当するパワーだが、日米の往復に使用する燃料は、これまたケタ違いの約1000トンだ。
埠頭に並んだ新型フォレスターが、次々とスロープから船内に運び込まれていくが、ドライバーのテクニックはまさに神業。通称「ギャング」と呼ばれるチームは監督、ドライバー、シグナルマンと呼ばれる誘導員、そして車両を固定する固縛員など20人ほどで構成され、一糸乱れぬ“連係ブレー”に目は釘付け。船内では前後30センチ、両サイド10センチの間隔で車両が並べられていくが、なんとドライバーはサイドミラーを使わず、車外にいる誘導員の指示だけを頼りにどんどん積み込んでいく。ドライバーの運転技量のみならず、ホイッスルで誘導するシグナルマンとの呼吸が重要だということが分かる。各チームとも、まるでスキルを競い合うように積み込み作業が進む。
■作業にも日本らしい“思いやり”が
さらにビックリなのは、車両が後進(バック)で所定の位置に並べられていくこと。「米国で車両を降ろす際、前進するだけで楽だし、アクシデントも減らせる」という理由からだとか。いかにも日本的な思いやりのこもった神業で、この日船内に積み込まれたのは、新型「フォレスター」を含めた約1400台。バイオレット・エースはアメリカ・ワシントン州のバンクーバーを経由し、カリフォルニア州のリッチモンドへ向け、17日間の航海に出て行った。
この他にも「SUBARUテックツアー」では、北海道美深にあるテストコースの見学や、歩行者保護を始めとするスバルの安全性能に対する実験施設の見学、スバル製の中央翼を採用するボーイング787-8型機でのフライトや、その中央翼を米国に運ぶ専用大型機の見学などを実施してきた。自動車のみならず、最新旅客機にもスバルの高い技術力と豊富なノウハウが息づいていることが体験できる。
北米市場で絶大な人気を誇るフォレスターは、スバルの質実剛健なブランドイメージの向上に大きく貢献しているのは間違いない。だがそれも、今回目撃できた職人技による地道な作業に支えられているのだ。次回は新型フォレスターの魅力をたっぷりとお届けする。
(取材・文/佐藤篤司)