五木寛之 流されゆく日々
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連載10020回 旅の始めはCMソング <11>
(昨日のつづき) 当時、そのオフィスには、私より若い世代の作家たちも何人かいた。伊藤アキラさんなどもその一人である。一世を風靡した『オー・モーレツ!』とか、今だに続いている『この木なんの木』などの…
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連載10019回 旅の始めはCMソング <10>
(昨日のつづき) そのうちCMソング以外のライターの仕事も忙しくなってきた。一時期、運輸省の外郭団体の論説主幹などという肩書きで、経営者やお役人のインターヴューなどもやっていたのだ。 「そろそろ…
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連載10018回 旅の始めはCMソング <9>
(前回のつづき) CMソングというのは、本来、ドライなものである。余計な情緒とか、雰囲気とかいったものは、あまり必要ではない。明かるくなくてはならないし、強いリズム感が不可欠だし、商品名を連呼する…
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連載10017回 旅の始めはCMソング <8>
(昨日のつづき) CMソングのことを、当時の業界用語でジングルといっていたことは前に書いた。そのCMソングを専門に書くライターの職業が、まだ確立されていない時代である。コピー・ライターという言葉も…
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連載10016回 旅の始めはCMソング <7>
(昨日のつづき) そんなふうにして、二足のワラジで始まったCMソング制作の仕事だった。この時期の話は『風に吹かれて』や『デビューのころ』などのエッセイ集で何度も書いている。 なにしろ素人なので…
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連載10015回 旅の始めはCMソング <6>
(昨日のつづき) 私が訪れたその銀座のオフィスは、三芸社という名前だった。後で知ることになるのだが、戦後、冗談音楽で一世を風靡した三木鶏郎さんのグループの分社みたいな組織らしかった。 当時、ト…
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連載10014回 旅の始めはCMソング <5>
(昨日のつづき) バンさんは簡単そうに言うが、たぶん戸惑っている私を励ますつもりだったのだろう。 CMソングが流行していることは知っていた。コマーシャルの創生期とはいえ、世間に流通しているCM…
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連載10013回 旅の始めはCMソング <4>
(前回のつづき) 人間の記憶とは、なんといい加減なものだろう。これまで自分が書いたり、喋ったりしてきたことが、どれも多少ずつ違っていることに気付いて、ため息がでることがしばしばだ。 またウィキ…
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連載10012回 旅の始めはCMソング <3>
(前回のつづき) この内外ビルの編集室にワラジを脱いで最初の何カ月かは、われながらじつによく働いたと思う。 午前中に東陸、つまり東京陸運事務所へ顔をだし、その後、丸の内の陸運局へ。運輸省など大…
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連載10011回 旅の始めはCMソング <2>
(昨日のつづき) 当時のラジオ関東は、横浜の野毛山の中腹にあった。局の窓からは、横浜の街が一望できて、夜には外国船の霧笛などもきこえ、なかなか風情があったものである。 霧笛といえば、その頃のR…
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連載10010回 旅の始めはCMソング <1>
私がいわゆるマス・メディアの世界に足を踏み入れたのは、1950年代の終り頃のことである。 6年ちかくいた大学を卒業できずに、“横に出て”しばらくたった頃のことである。退学したのは授業料が何年分も…
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連載10009回 六〇年代をふり返る <5>
(昨日のつづき) 自分自身の60年代後半をふり返ってみると、じつに勤勉に仕事をしていたことがわかる。年齢からいっても30代前半だ。それまでストックしていたものが、一気に噴出したのかもしれない。 …
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連載10008回 六〇年代をふり返る <4>
(昨日のつづき) あらためてふり返ってみると、その年(67年)は、本当によく仕事をしている。東京を離れて地方に住んでいることからの孤立感も作用していたのだろうか。中央のジャーナリズムや、いわゆる文…
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連載10007回 六〇年代をふり返る <3>
(昨日のつづき) 私が職業作家として正式にデビューしたのは、1966年の春、「小説現代新人賞」を受けてからのことだった。 そのときの選考委員は、柴田錬三郎、北原武夫、有馬頼義、田村泰次郎、など…
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連載10006回 六〇年代をふり返る <2>
(昨日のつづき) 60年代のことを年表だけで見ても、実際の時代の空気は伝わってこないだろう。 65年にアメリカのベトナム北爆が開始された。ベ平連が小田実を先頭に全国的な運動を展開する。ローリン…
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連載10005回 六〇年代をふり返る <1>
先月、BSテレビの歌番組にゲスト出演した。私が小説家としてデビューする前、放送作家や作詞家として働いていた時代のことなども番組中でとりあげられることとなり、横浜の野毛山でロケの撮影が行われた。 …
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連載10004回 流れ流されて四〇年 <5>
(昨日のつづき) いろんな方々のサポートがあって、この連載が続いた、と書いたが、なによりも感謝しなければならないのは、時おりであってもこのコラムに目を通してくださる読者諸氏に対してだろう。 何…
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【特別再録】野坂昭如ノーリターン <文学、15年12月12~19日付>
戦後70年というけど、敗戦後の二、三十年は、戦前レジームの延長だったと思う。 文芸ジャーナリズムにしてもそうだった。文学界も、エンターテインメントの分野も、戦前、戦中の大家が幅をきかせていたよう…
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【特別再録】強制収容所(アウシュビッツ)の三つの顔<歴史、14年7月23日~8月2日付>
アウシュヴィッツは、人類の最大の危機の象徴である。この門をくぐらずに、現代人は思考することも、行動することもできない。 それは劣等民族として区別した人間を、すべて絶滅しようとする極限の悪の象徴だ…
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【特別再録】今なぜ電子書籍なのか <電子書籍、11年8月15~27日付>
以前、横組みの小説『風の王国』を出版してうまくいかなかった理由の一つは活字にありました。私たちはずっと縦組みの活字を使用してきた。私はデビューのころから活字に非常に関心があったものですから。活字には…