がんステージ3 風俗嬢セリナの遺言
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<15>誰かのために働き、居場所を見つける
「私、自分のためだと頑張れないんだよね」 長く在籍していたSMクラブの同僚、Hちゃんはよくそんなことを口にしていた。 Hちゃんに限らず、歌舞伎町のSMデリヘルの待機室はこんな子たちで溢…
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<14>気を使って遊ぶお客さんを満足させ、自分も満足していた
子宮にがんがみつかり、それがリンパにまで転移して半ば強制的に性風俗の表舞台から降りて、そろそろ2年となる。私は今、歌舞伎町でデリヘルの店長をやっている。前回書いた、同じ風俗の世界で仲良くなった同年代…
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<13>仏さまは地獄に落ちて初めて見える
私が進行がんにかかっていると店のオーナー兼店長に打ち明けた時の事を思い出している。オーナーと私は2015年8月15日にロボットデリヘルを立ち上げた。 たまたまだけど終戦記念日だったから、よく…
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<12>2年ぶりに戻ったSMクラブで規則正しい生活に
たかが風俗嬢と、つくづく思う。お客はこっそりやってきて、やむにやまれぬ事情の女が相手をする、なんていうのはもう古い時代の話だけれど、それでもまともな世界じゃない。 婚約者と別れた私は歌舞伎町…
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<11>不安は換金できる 「がん」も「オンナ」もカネになる
病院から突然電話がかかってくる時は100%良くない話だ。先週、SMクラブ時代を思い出し懐かしい気持ちで原稿を書いていると、主治医から携帯に着信があり、「ちょっと詳しく、再検査したいところがあって」と…
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<10>結婚で辞めるはずの風俗に出戻り
結婚したことも家庭を持ったこともないまま、がんになってしまった。もうこれからかなうことはないかもしれないと思うと、過去に婚約していたことを思い出す。キャンパスで出会った同級生。4年の時、卒業したら一…
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<9>リンパ節の切除で左足がパンパンに腫れるように…
「あ、そうだ、もう子宮はないんだった」と、何度も呟いている。おなかが痛むと、子宮のことを思い出す。子宮は摘出してしまったのに、たまに生理痛のような痛みが襲ってくるのだ。本当におなかが痛いのか、体が生理…
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<8>年上の同級生に誘われSMクラブの女王様になった
「私の職場に遊びにこない?」 陽春のキャンパスで、1つ年上の同級生に声を掛けられたのが、SMとの出合いだった。大学生にはちょっとない色気をまとい、いつもひとりでたばこを吸っている彼女を知っては…
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<7>病院での夜は100回を超えた
また入院している。6回目の抗がん剤投与のためだ。がんの発覚から、はや1年半。病院で夜を明かした数を数えたら100回を超えていた。これまでもう何年も歌舞伎町の真ん中に住んで、ほとんど毎日、体を売ってい…
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<6>キラキラの同級生に憧れしゃべり方や振る舞いを真似た
4月になると、新たなスタートを切る季節の風に乗って、風俗の扉を叩く女の子が増える。毎月入院して行う抗がん剤投与の合間に、店長として彼女たちを面接していると、お金目当てだけじゃない若い子と向き合うこと…
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<5>昼は高校で授業を受け夜はたまに風俗
病院の廊下を点滴しながら歩いていると、制服の女子高生とすれ違った。2000年代初頭、自分も高校生だったのだが、ずいぶん遠くまで来てしまった気がする。 援助交際という言葉が流行語大賞に入賞する…
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<4>警察からかかってきた電話「この人は変態でしたか?」
「Aさんとはどんな関係ですか?」と、警察から電話がかかってきたのは、高校時代のことだ。 中学時代に長野の繁華街で声を掛けてきて、おこづかいをくれるから、会っていたサラリーマン。40歳前後だった…
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<3>寮生活を抜け出し中年サラリーマンとお茶して3万円
左腕に抗がん剤の点滴が24時間ついている上、アレルギーで右手首にも点滴が入り、両手が使えない。病院のベッドであおむけのまま、思考が現実を超えていく。 女は、金になる。それが分かったのは中学生…
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<2>お腹を開いた結果…子宮と卵巣もがんにむしばまれ全摘
キャストをロボットとして派遣する風俗「ロボットデリヘル」に私は所属している。病院でお腹のあちこちから管が出た、ボロボロの体を横たえながら、本当にロボットだったらいいと思った。駄目になったパーツを取り…
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<1>セックスのあと頻繁に出血…検査で腫瘍が見つかった
「めちゃくちゃヤラれて、こうなってるだけじゃないの?」 新宿を探し歩いて3つ目、ようやくたどり着いた雑居ビルの2階。婦人科の老医師は診察台に横たわる私のあそこを一見すると、診断もせずに吐き捨て…