小説「ゴルフ人間図鑑」 第3話 OB
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(9)加山は笑美子を抱き寄せ…
私は、目の前にある、私が「卵を産んだ」ボールを拾い上げ、ポケットにしまった。 加山は、私のOBボールを打ちやすいフェアウエイに運び、そこに置いた。 「皆さん、会長のボールは残念ながらO…
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(8)会長、そのボールは違います
私は、スコアを見た。加山五郎という若手プロデューサーとスコアがイーブンだった。 加山は、すっきりした印象の30代の男だ。それなりにとんがった番組を作るので、名前は聞いていた。しかしまだゴール…
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(7)残念なことにナイスショットの大合唱
「それで提案ですが……」 笑美子が遠慮気味に言った。 私は、椅子を回し、笑美子に向き合った。 「お伺いしましょうか」 「若手とゴルフをされて、篠田さんの不正……。ごめんなさ…
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(6)あなたに負けて運が尽きたのね
数日後、ヤクザは何者かに射殺されて、命を落とした。 「あなたに負けて、運が尽きたのかも」 鷹子は言った。 反対に私は、あの命懸けの勝負の後、運が巡ってきて、一気に出世街道を駆け…
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(5)きっかけはヤクザとの勝負だった
「そうだよ。あの時以来だと思う」 私は、若い頃、ヤクザに絡まれてにっちもさっちも行かなくなった時があった。 マスコミの常で、ある金融詐欺事件を取材している時、銀座で鳴らしていたヤクザを…
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(4)誰も不正を指摘してくれない
「会長、なにか?」 金杉が救いを求めるように言った。 「いや、何もない」 金杉は、次の社長候補だ。現社長も、そろそろ交替させようと考えている。 しかしこんな佞臣では、社長…
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(3)「卵を産む」行為をしてしまう
左側のOBラインは浅い。私のボールは無情にも左に勢いよく転がっていく。OBの可能性が高い。キャディが打ち直しを指示した。 しかし私は大丈夫と言い、誰よりも早くボールの傍に駆け寄った。私のボー…
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(2)OB即ち、規格外が許せない
あまりにも頻繁に社長を交替させるものだから、役員も社員も皆が私を恐れるようになった。何も言ってこない。 これではいけない。早く、私を超える人材を選んで、後継者に据えなければならない。私だって…
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(1)会長になっても人事権は手放さない
1 新聞社やテレビ局などのマスコミには天皇と言われるトップがいる。 日本国天皇は、いつも国民と寄り添われ謙虚な姿勢である。国民の尊敬を集めておられる。 ところがマスコミの天皇は…