野村宏伸が感謝…映画抜擢＆松田優作に会わせてくれた恩人

故・森田芳光監督と野村宏伸（Ｃ）日刊ゲンダイ

　でも、最初はもちろん受かるとは思っていませんでした。ただ１次、２次……と進むうち、欲が出てきて。お金のこともあるし、小さい頃からドラマや映画が好きで、中でも「人間の証明」とか角川映画がお気に入りだったんです。

　オーディションを受ける少し前には、大好きな松田優作さん主演の映画「家族ゲーム」を、池袋の映画館にひとりで見に行ってた。その映画は衝撃的で、「メイン・テーマ」の審査会場で審査員に森田さんの名前を見つけた時、「あれ、『家族ゲーム』を撮った監督さんだ」って不思議な縁を感じました。

　最終的にボクを選んでくれたのは、森田さんだと聞いています。ボクに合わせて、脚本も書き換えてくれたそうです。ただ、当時はレッスンを受けたこともないから全然、芝居ができない。最初の沖縄ロケ日の夜から毎日、翌日撮る分を、森田さんがホテルの部屋でマンツーマンで教えてくれました。

　森田さんは、単にマネすればいいようにボクの役をやってみせたり、ひろ子ちゃんの役をやって相手をしてくれたり。厳しくないし楽しくて。お兄さんみたいなあったかい感じの人でしたね。