評論家が指摘 セカオワ藤崎彩織「ふたご」と直木賞の奇縁
「今年読んだ小説の中で一、二を争う作品」と高く評価するのは、作家でアイドル評論家の中森明夫氏だ。藤崎彩織(31)名義で執筆した小説「ふたご」(文芸春秋)が、第158回直木三十五賞の候補に選ばれた。今年のNHK紅白歌合戦にも出場する人気バンド「SEKAI NO OWARI」メンバー、Saoriが本名で執筆した処女作という話題性から文壇の枠を超え、盛り上がりを見せている。
だが、羨望が集まる話にはやっかみがつきまとうのも世の常。直木賞を主催する日本文学振興会は複数の文春関係者が役員に名を連ねており、専業作家ではない又吉直樹(37)の「火花」(文芸春秋)の芥川賞受賞も記憶に新しい。一部ネット媒体やSNSなどでは「ふたご」を色眼鏡で見る声もちらほら……。
同作はヒロインと1歳年上の歌声の素晴らしい少年が、赤の他人なのに双子のように生きてしまう物語。前半では、留学先の米国で挫折を味わい、帰国後、精神科病院に収容される少年が描かれる。このエピソードはセカオワのボーカルであるFukaseを彷彿とさせる描写で、私小説的要素を感じさせる。