<12>「相談がある」電通上司が社員食堂で告げた言葉の真意
自分から電通を辞めたって言ってるけど、クビになっただけなんだよね(笑)。ある日、上司に「相談がある」って呼ばれて、上のほうで問題になってるって言われたんだ。で、「どうする? もとの『さっちん』に戻るか?」ってね。「もとの『さっちん』」ていうのがおかしいだろ(笑)。その頃は、写真展やる場所もないから、銀座にある「キッチンラーメン」っていうラーメン屋さんの壁で写真展やったりしてたんだ。店のオヤジに頼んで、「食欲と性欲の写真展」と称して、いろんな絵を飾ったりしてる壁に裸の写真を並べてガーッとやったりしてた。それが、その当時『平凡パンチ』とかにドンドン書かれるわけ。「あの電通の女陰カメラマン」とかね。
もうしようがない、辞めちゃおうって、その場で返事したんだ。でもさ、そんな重要な話を、社員食堂でだぞ(笑)。会社は銀座なんだから「一杯行くか?」ってクラブにでも連れてって、飲んだ勢いで言ってくれりゃいいのに、社員食堂で、カルピスかなんかでだよ(笑)。でも、オレ、ついてたよね。電通も9年目で、向こうがそういうふうにしてくれたんだって。もし10年会社にいたらダメだった。その部長が偉かったよ。「おまえは辞めたほうが伸びる。こんなところにいるんじゃない」っていうことを、暗に言ってくれたんだよ。で、「ほんとはクビなんだけど退職金のことがあるから」ってね。