「生ライブ」はもう限界…公演するも休演するも地獄
■終演後2週間はヒヤヒヤ
驚いたのは会場の“寒さ”。開演前からドアを全開、公演中もMCをこまめに挟み、そのたびに換気を行うため、スポーツの屋外観戦と変わらない。見る側もだが、演者にも負担を強いることになる。さらに、演者は観客を入れてライブを決行するだけでも眉をひそめられ、観客から感染者が出た日には猛バッシングにさらされるリスクをも負い、「ライブ後2週間は感染者が出ないよう祈るばかり」(関係者)だという。同公演は無事終えたわけだが、まさに生ライブは命がけだ。同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏がこう言う。
「エンタメ業界は頂点の一部だけに富が集まり、現場はやりがい搾取が常態化していたが、今ついに限界にきたといえる。このまま人材が流出したら再スタートは厳しい。ライブエンタメの必要性と共に、現場の人材の大切さを再認識し、ほそぼそとでもエンタメのともしびを絶やさないことが大事。ファンドなどで見る側が支える制度を整え、既得権者は富の配分をすべきでしょう」
アーティストの熱い気持ちと、観客の拍手、生ならではの感動はひとしお。環境を整えたうえで、生のライブを絶やさないことがエンタメ界に急務なのかもしれない。
(取材・文=岩渕景子/日刊ゲンダイ)