著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<35>森山大道さんが撮ったヌードに「やられた」と嫉妬した

公開日: 更新日:

 森山さんは、オレより二つ歳上なんだよ。(森山大道 写真家、1938年生まれ)

 森山さんに、やられたなぁ、きたなぁ、と感じたのは、やっぱり『写真よさようなら』。オレ、その頃に電通をやめたんだよね(1972年)。森山さんが『写真よさようなら』を出して、同じ出版社からオレの写真集も続けて出す予定だったんだよ。それで、よし、向こうが「写真よさようなら」なら、こっちは「写真よこんにちは」というぐらいの気持ちでいこうって。

 自分でレイアウトもやって、1冊作ったんだけど、出版社が倒産しちゃったんだ。だから出せなかった。それから10年ぐらい経ってから、『東京エレジー』になったんだけどね(1981年刊写真集)。作っている途中で親父が死んで、死のほうへと変わっていったんだ。

(写真集『写真よさようなら』は1972年に写真評論社より刊行。「他人の写真やテレビなどの無原則な複写や、シャッター空落としのネガの切れっぱし」など「アレ・ブレ・ボケ」の極致とも言うべき写真群で構成され、何が写っているのか、何を写そうとしたのか判別がつかない写真ばかりが収録された。「写真とは何か」を追い求めた森山の大きな転機となった金字塔的写真集。巻末に写真家・中平卓馬との対談を収録。この写真集へのネガティブな反応が引き金となり、その後、森山は心身ともに憔悴し苦闘、写真から離れることとなる)

あんな“ブレ、ボケ”で…

 森山さんの『写真よさようなら』と同じぐらいの本の大きさでさ、ドーンと出そうと思ってた。やっぱりね、嫉妬していたからね、『プロヴォーク』(写真同人誌)に。『プロヴォーク』で、森山さんが撮ったヌードを見て嫉妬したからね。だから、あっ、やられたなと。だってその頃さ、あんな“ブレ、ボケ”で、踏切を撮ったってなんだよって(笑)。やられたなってさ。

(森山は、『写真よさようなら』について、「とにかく当時、あの写真集を褒めてくれたのは荒木さんだけね。ほとんど誰も何の反応もしなかったしさ。デザイン的だとかってよく言われたけどね。本質的な部分であれが何なのかっていうことを一番最初に荒木さんだけがわかってくれた」と語っている)

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手