著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<34>オレは自分だけの安保をやると“写真行為”を始めたんだ

公開日: 更新日:

 オレと森山大道さん(写真家)が一番最初に会ったのはいつかってよく聞かれるけど、森山さんとの最初の出会いというのは、オレの場合、写真家との出会いっていうのは、本人と会ったときではなくて、写真を見たときなんだよね。写真から付き合っている。写真を見ると本人がわかる。これは相性が良いっていう、何かを感じる。それを一番感じたのが大道さん。そうすると、向こうにもこっちの思いが通じていて、何かのときに声をかけてくれる。東松照明さん(写真家)もそうだね。

 そういう意味で森山さんの写真と出会ったのは、『プロヴォーク』。「エロス」が特集されていた『プロヴォーク』(第2号)で、森山さんが撮ったヌードを見て嫉妬したんだよね。その頃、自分もさ、「写真はエロスだ」って考えていたからね。やっぱり「エロスがなかったら写真じゃない」と思っていたからさ。写真というのは、死をね、タナトスを含んでいないと、写真としてのエロスにはならない。そういうときだったからね。森山さんの写真に出会ったのは。(『プロヴォーク』は1968年に写真家の中平卓馬と評論家の多木浩二を中心に、岡田隆彦〔詩人〕、高梨豊〔写真家〕が加わって創刊された写真同人誌。翌年刊行の2号より森山大道が参加。雑誌の副題に「思想のための挑発的資料」を掲げ、政治や革命の季節である1960年代の思想状況を色濃く反映。写真が表現として成立する根源を問い直すメディアとして大きな影響を与えた)

オレは電通でさ。仲間になる要素はないわけだよ

『プロヴォーク』に嫉妬しているところがあったし、惹かれていたんだよね。今、こういうときなんだって。オレは電通でさ。広告社会とか、ダメな社会に関わっているからっていう思いがあったからさ、仲間になる要素はないわけだよ。仲間になるなら、やめなくちゃならない。そういうジレンマがあった。だから、そういうのがあったおかげで、オレの場合は、すぐそばにあった会社のゼロックス(コピー機)を使って写真集を作るというのが始まったんだよ。世間は安保で、オレは自分だけの安保をやるって写真行為を始めたんだ。会社にゼロックスの機材が入ってきて、これがいいわけだよ。すぐに自分で写真集が作れる。トーンとかも変えられてさ。それでゼロックスを使って『ゼロックス写真帖』(25巻)を作ったの。受付嬢とかを口説いてさ、女子社員たちに作業をしてもらってたんだ。女工哀史だよね(笑)。1970年だからダジャレで70部作って、オレが気になるヤツらに勝手に送ってた。森山さんにも送ってたんだよね。

(構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  2. 2

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  3. 3

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  4. 4

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  5. 5

    中居正広の騒動拡大で木村拓哉ファンから聞こえるホンネ…「キムタクと他の4人、大きな差が付いたねぇ」などの声相次ぐ

  1. 6

    木村拓哉は《SMAPで一番まとも》中居正広の大炎上と年末年始特番での好印象で評価逆転

  2. 7

    中居正広9000万円女性トラブル“上納疑惑”否定できず…視聴者を置き去りにするフジテレビの大罪

  3. 8

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭

  4. 9

    中居正広が払った“法外示談金”9000万円の内訳は?…民放聞き取り調査で降板、打ち切りが濃厚に

  5. 10

    中居謝罪も“アテンド疑惑”フジテレビに苦情殺到…「会見すべき」視聴者の声に同社の回答は?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭