北海道美瑛町 黄金色に輝く小麦畑と「パッチワークの丘」
旭川空港から車を走らせて約15分。北海道のほぼ中央に位置する美瑛町は、「丘のまち」として知られる。十勝連峰のすそ野にあたる美瑛は、活火山の十勝岳によって形成された盆地。この土地の丘陵を生かして、小麦畑を中心にジャガイモやトウモロコシ、タマネギなどの畑が広がる。春蒔き小麦の収穫時に重なる7月には畑の一面が黄金色に輝くが、訪れたのは10月初旬。少し肌寒くなってきた美瑛の町は、秋蒔きの小麦畑と赤や黄に色づいた落葉松の絶景が広がっていた。
◇ ◇ ◇
丘のまちとして美しい景観が全国区になったのは、1977年に写真家の故・前田真三氏が発表した代表作「麦秋鮮烈」がきっかけだそうだ。真っ黒い夕立雲の隙間から差し込んだ夕日が小麦畑を鮮烈なオレンジ色に照らした一枚で、観光客の多くはこの景色を求めて訪れる。
小麦畑をはじめとする丘陵での作付けは「パッチワーク」にも例えられる。この風景と農業は関係が深い。北海道では、小麦やジャガイモなどの作物は毎年同じ畑では作らないという。畑の養分が損なわれるリスクを防ぎ、作物の生育を保つために必要なのだとか。こうして毎年、畑の“絵柄”が変わるという。おいしい作物が作れるのはもちろん、二度と同じ風景が見られないのが魅力だ。
また、美瑛では最も作付面積が広い小麦を味わえる店が充実する。おしゃれなパン屋や洋菓子店が多い。
「食パンがお土産になるんですよ」というのは農場を経営する熊谷留夫さん。
「購入して2~3日経っても、ふんわり焼きたての香りともちもちの食感が残っています。お客さんに喜ばれるんですよ。美瑛の小麦農家は肥培管理が優れていて、土づくりに力を入れています。そのために町や農協からの助成金も20年ほど続いていて、町をあげて小麦を作っていますね」
内陸の気候の影響で、高タンパクの小麦なのも特徴。「ゆめちから」や「きたほなみ」などパンに適した小麦が育つ。
「ゆめちから」の食パンを求めて向かったのが、「美瑛選果」だ。隣接するパン工房には列ができる。食パンは持ち上げるとずっしりとしているが、力を入れずとも裂けてしまう。香り高く、程よい甘さがクセになりそうだ。
(問)美瑛選果
℡ 0166・92・4400
https://bieisenka.jp/
小麦を味わうなら、パスタやうどん、ラーメンも外せない。
小麦生産者の熊谷さんが経営するうどん処「麦彩の丘」は、美瑛の小麦「きたほなみ」を100%使用した手打ちうどんで観光客に大人気。しっかりとしたコシとつるつるの麺は、特別製粉した1等粉を使用し、店内で製麺している。
名物メニューの「美瑛塩豚うどん」は、特製塩ダレを絡めた美瑛豚とうどんの相性がバッチリ。
(問)麦彩の丘
℡ 0166・76・5377
(休)火曜日
小麦畑だけでなく、畑一面に咲き誇る花も美しい。「四季彩の丘」は、春夏秋の折々の花を楽しめるテーマパークだ。
カートやバギーなどに乗って園内を回りながら、花の香りと風を感じて北海道の雄大さを体感。絶景のピークは7月だが、秋にもコスモスなどが鮮やかに咲く。景色の移り変わりを感じるために毎月リピートするお客さんも少なくないという。
冬期間は花畑が雪に覆われて、スノーランドに。要予約でスノーモービルなどが楽しめる。また園内には通年でアルパカ牧場も開放されていて、エサやりも体験できる。
(問)四季彩の丘
(住)上川郡美瑛町新星第三
https://www.shikisainooka.jp/
50年前、たばこのパッケージで有名になった木
美瑛のまちでドライブも満喫したい。パッチワークの丘やフォトジェニックな木々が点在する。
セブンスターと名付けられた1本のカシワの木。これは、1976年に日本専売公社(現JT)の「セブンスター」のパッケージに使用されたことで知られる。
またマイルドセブンのCMロケ地になったマイルドセブンの丘や、3本並んだカシワの木が親子に見えることから、「親子の木」などがあり、目を和ませる。
美瑛駅から南に向かうと、美瑛白金温泉がある。
その近くにある「白ひげの滝」や「白金青い池」は人気の観光スポットだ。「青い池」の色は、アルミニウムを含んだ水と美瑛川など成分の異なる河川が混ざって、さらに太陽の光の反射が反映されてできたという。
カメラを向ければSNS映えはもちろんだが、エメラルドグリーンの景色を無心で眺めていると心が休まる。
(問)四季の情報館案内所
https://www.biei-hokkaido.jp/ja/
車を走らせて少し足を延ばし、「十勝岳ジオパーク」にも向かった。
十勝岳は約30年周期で噴火を繰り返し、人々の営みと共存してきた。現在、赤や黄に色づき始めた山の頂から煙が噴き出している。その迫力と美しさにカメラを構える観光客が集まっていた。ジオパークでは溶岩流や火砕流の痕跡が観察できる。
(問)十勝岳ジオパーク
(住)上川郡美瑛町本町4-6-1
https://tokachidake-geopark.jp/
洋食とcafeじゅんぺい
「洋食とcafeじゅんぺい」の名物は「海老丼」。
ザクザクの衣とプリプリの海老のフライが3本(竹=1210円)のったどんぶりで、オリジナルの甘辛ダレはご飯にも染み込んで食欲をかき立てる。
(問)洋食とcafeじゅんぺい
(住)上川郡美瑛町本町4-4-10
https://youshokutocafejyunpei.com/index.html
美瑛放牧酪農場
「美瑛放牧酪農場」(美瑛ファーム)のソフトクリームもぜひ味わいたい。
提供されるその場から溶け出し、ミルクを食べているようなおいしさ。タイミングが良ければ、丘陵地形を生かした牧場で牛の行進が見られる。併設する工場ではラクレットやフロマージュブランなどのチーズが作られている。
(問)美瑛ファーム
(住)上川郡美瑛町字新星平和5235
https://biei-farm.co.jp/