話題沸騰 皮ごと食べられる「奇跡のバナナ」の正体<前編>
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日本人に最も親しまれている果物といえば第一に名前が挙がるのがバナナだろう。どこの家庭の食卓にも、たいていバナナが置いてあるものだ。最近そのバナナに皮ごと食べられるという国産の「奇跡のバナナ」が登場、注目を集めているという。そこで今回は「奇跡のバナナ」を巡る話題を特集してみた。
◇ ◇ ◇
「奇跡のバナナ」と呼ばれているのは岡山県で作られている「もんげーバナナ」という名前のバナナ。「もんげー」は岡山県の方言で「ものすごい」という意味だ。
このバナナが「もんげー」と名付けられた理由はいくつもある。バナナは年間を通して16~30度の気温がないと育たない熱帯生まれの果物だ。そのため日本は世界でも有数のバナナ消費国ながら、葉が成長しても果実がならないなど日本の環境はバナナの栽培に適さないのが常識であり、国内消費量の99%、年間約100万トンがフィリピン、エクアドルなどから輸入されている。
つまり、日本国内、それも冬には0度以下の気温になることも珍しくない岡山県でバナナが栽培されていること自体が「もんげー」なのだ。
さらに、味そのものも普通のバナナとは大きく異なっている。「もんげーバナナ」の場合、糖度が25度以上。この数値は普通のバナナの約1.5倍で、ねっとり濃厚な甘さが楽しめるというわけである。
しかも「もんげーバナナ」は無農薬で育てられ、皮が薄くてえぐみがないので、皮をむかずにそのまま食べられるというから、バナナの常識を覆す「もんげー」なバナナだ。
「もんげーバナナ」には栽培する側にとっても見逃せないメリットがある。それは生育のスピードだ。普通のバナナは苗を植えてから実が成るまで1年半もかかる。ところが「もんげーバナナ」はその2倍の速さで成長。約9カ月で収穫できるから収益の最大化が期待できる。
40年かかって編み出した「凍結解凍覚醒法」
「もんげーバナナ」は、どうしてそんな数々の「奇跡」を引き起こすことができるのか、「もんげーバナナ」の生みの親D&Tファーム代表・田中節三さんに聞いてみた。
田中さんは農業の専門家でもないのに大のバナナ好きが高じて約40年間、私財を投じてバナナを研究。2度の破産を経験しながらも諦めず、ついに「もんげーバナナ」を開発したという、こちらも「もんげー」な人だ。
「子供の時に食べた甘くておいしいバナナが、伝染病が流行ったことで日本に入ってこなくなったのです。大好きだったあのバナナがもう食べられないのかと落ち込んでいた時、だったら自分で作ればいいと思ったのがきっかけですね。40年かかってしまいましたが、その間、辛いと思ったとか苦労したということは一度もありません。なぜって、バナナの研究は私にとって事業ではなく楽しい趣味でしたから」
さまざまな試行錯誤の結果、田中さんが確立した日本国内でもバナナが栽培できる方法は「凍結解凍覚醒法」と命名され、特許を取得した。これはバナナの苗を約180日間かけてマイナス60度までゆっくり冷却。人工的に苗に氷河期を体験させることで植物本来の遺伝子のチカラを覚醒させようというものだ。
そして、覚醒した苗には耐寒性が備わり、零下というあり得ない環境でもバナナが育つことを可能にしたばかりか病害虫耐性も高まり、無農薬栽培もできるようになった。
「凍結解凍覚醒法はパパイヤ、パイナップル、コーヒー、アボカドなどの作物にも応用でき、すでに一部は栽培が始まっています。今後はそれらの量産化を図り、日本では栽培できないといわれてきた作物が日本でも採れるようになればいいですね」
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