日本ハム「新庄再生工場」の“納期”は2023年? 新本拠地開場を見据えた裏ミッションの正体
新庄剛志監督(49)による「北の再生工場」が稼働する。
日本ハムが13日、巨人を戦力外になった古川侑利(26)と育成契約で合意に達したと発表。8日の12球団合同トライアウトで最速タイの149キロをマークした右腕投手で、ネット裏ではその投球をビッグボスも視察していた。
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注目監督を迎えた日本ハムはすでに、前ツインズのJ・ガント(29)ら4人の新外国人を獲得しているものの、“大物”と言えるほどの実績はない。国内補強第1弾となったこの日の古川も育成契約。新監督としては物足りないバックアップだが、「いや、それは監督自身が望んでいることでもある」と球団OBがこう続ける。
■「二軍の選手を育て上げる」と明言
「監督は西川、大田らを戦力外にした球団の方針を理解したうえで、『いい選手を取ってくる野球は面白くない。戦力は二軍の選手。補強はそんなにしないで、二軍の選手を育て上げる』と育成重視の方針を明言していますから。『プロ野球の世界に入ってくる選手というのはレベルは一緒。問題はメンタル。僕はメンタル的なものに関しては引き出す力があると思っている』とも言っていますから、まさに阪神時代に薫陶を受けた野村克也監督の『再生工場』ですよ。野村監督は頭を使ったID野球と経験に裏打ちされた適材適所の起用で、戦力外選手や伸び悩む選手を復活させた。新庄監督はメンタル面からのアプローチで埋もれた選手を再生しようという算段です」
古川は楽天、巨人での8年間で48試合に登板して6勝14敗、防御率5.16。MAX154キロの速球を持ちながら、今季の一軍登板はわずか1試合に終わった。伸び悩みの原因のひとつはコントロールで、通算183イニングで90四球。勝負どころで球が甘く入る悪癖もあった。メンタルに起因することの多い制球難が改善されれば、面白い存在だということだろう。
「そういう意味では、日本ハムには『再生工場』の候補者がゴロゴロいますからね。特に高卒4年目の今季、初の一軍出場ゼロに終わった清宮幸太郎(22)、3年目で1試合登板(1敗、防御率9.00)に終わった吉田輝星(20)です。さっそく新庄監督は就任後に視察した秋季キャンプで、投球練習中の吉田のもとに足を運び、『めっちゃ速くね? オレの現役のとき、打てないわ。速っ!』とメディアを通じて絶賛。自信をもたせるかのようにメンタル改革に着手している。『痩せた方がモテるし、カッコいいよ。今は(体に)キレがない気がするから痩せてみよう』との言葉で減量を命じた清宮しかりです。2人ともその気になっていますから、早くも新庄効果は出ていると言っていいんじゃないでしょうか」(前出の球団OB)
栗山時代10年でチーム内の空気がよどむ
とはいえ、である。新庄監督のハンドリングによって、若手や古川のような他球団をお払い箱になった選手がすぐに再生するならともかく、なにしろファームをウロウロしていたような連中だ。このオフ、新たに獲得した4人の外国人選手にしても、その能力は未知数と言わざるを得ない。メジャー通算56発のヌニエス(27)にしても、今季は最終的にブルワーズ3A。バリバリのメジャーリーガーは皆無だ。
「日本ハムのフロントは来季を地ならしと位置付けているようです。いきなり優勝争いに絡むとすれば、うれしい誤算でしょう」と、別の日本ハムOBがこう続ける。
「本来、活発に新陳代謝を行う球団が、栗山前監督が10年間にわたって指揮を執ったことによってメンバーが膠着化。中田、西川、大田らの主力は年齢を重ね、内部の空気までよどんできた。可能性をもったエネルギッシュな若手が内部に埋もれてしまっていたのです。このオフ、ベテランを放出してあえてポジションに穴をあけたのは、強引にでも彼らの働き場所をつくるため。フロントは新庄さんを監督に据え、とにかくチームをドラスチックに変えたい。大掃除は来年のオフまでかかると聞きましたから。来季は結果が出なくても、若手や新外国人をとっかえひっかえ実戦で使って力を見極め、これと見込んだ選手は辛抱強く使って戦力に育てるでしょう。勝負は再来年ですよ」
再来年の2023年には総工費600億円超の新球場が開場する。新球場元年に優勝争いするようなチームをつくることが、来季に向けた新庄監督の“使命”というのだ。既存の若手も含めて選手をその気にさせることに自信をもっている新庄監督であれば、チームをガラリと変えてくれるのではないか──。