安保法案の欠陥を衝く
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<第20回>政治家の良心とは何か、矜持はないのか、胸は痛まないのか
冷戦期、ソ連が芸術的優位性誇示のため威信をかけて開催した第1回チャイコフスキー国際ピアノコンクール。もちろんソ連政府はソ連人の優勝を予定していた。しかし、審査員だったスビャトスラフ・リヒテルは、西側…
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<第19回>法文と現実の矛盾、乖離はまるで答えのない謎かけだ
プッチーニのオペラ「トゥーランドット」で、姫は求婚者に解けない謎かけをする。 「氷のように冷たいが、周囲を焼き焦がすものは?」 解けなければ、求婚者の命はない。今回の法案や国会審議を見…
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<第18回>横畠法制局長官のリーガルマインドは痛まないのか
今日は数学の授業だ。方程式について学ぼう。中学生にもわかる。 いわゆる我が国の個別的自衛権発動要件を定めた(昭和)47年見解における旧3要件は、(1)あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命…
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<第17回>安倍首相は過去の自分の質問を忘れたのか?
「101回目のプロポーズ」というドラマがあったが、あれは最後にプロポーズが成功する。しかし、何回アタックしてもダメなものはダメな場合もある。 我が国の法体系上、自衛権行使の前提たる「外国の武力…
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<第16回>昨年7月の閣議決定は明確な「自衛隊法違反」だ
今回の安保法制のエンジンとなって法制を走らせているのは、いわゆる「限定的集団的自衛権の行使」を認めた昨年7月1日の閣議決定である。従来の憲法9条解釈の心臓であった47年政府見解は、集団的自衛権を否定…
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<第15回>かくも不条理が露呈した「安保法案」のほころび
参議院の議論も1カ月が経ち、衆議院を通じて不誠実・不十分・不合理な答弁はかなり集積してきた。しかし、ただただ不合理として一蹴してもいられない。すなわち、答弁は政府見解であるわけだから、その通りの運用…
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<第14回>参院で審議が止まった防衛相の虚偽答弁
自衛隊を出動させる場合、防衛大臣には「安全確保配慮義務」がある。例えば、自衛隊員が整備中の事故で亡くなったような場合、防衛大臣は安全配慮義務違反を負う可能性がある。 防衛大臣が安全配慮義務を…
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<第13回>この法案はルービックキューブでつじつまが合わない
間違いであると思っていたら、実は「あえてそうしていた」ということがある。狡猾でしたたかな話だ。「逆オオカミ少年」とでもいおうか。 自衛隊法で、「武器等(航空機、艦船も含む)防護」の条文におけ…
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<第12回>裏口からフルスペックの集団的自衛権の行使が可能
不動産屋の広告で、「オートロック完備、女性も安心」といううたい文句をよく見る。実際に行ってみると「非常口」と称する裏口が常に開いていて、「皆さんそこから出入りしていますよ」などとさわやかに言われるこ…
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<第11回>子分に責任押し付ける親分の下で国防は機能しない
任侠映画で、抗争相手の組長を仕留めると、出頭するのは主人公演じる下っ端で、「組ぐるみでやったんだろぉ!」という刑事の取り調べにも、親分を守るため、かたくなに「俺が一人でやったんです」と繰り返す姿に、…
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<第10回>「自衛隊リスク上がらぬ」の強弁はマトリックスの世界
本安保法制が成立することによってリスクは上がるのか? という問いに、政府は「リスクは上がらない」と強弁している。法案の「運用」や、自衛隊の「訓練」でリスクを最小限に抑えるのだそうだ。 しかし…
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<第9回>後方支援の対象国が「違法な武力行使」の可能性
レッテル【(オランダ)letter】 (1)文字。 (2)商品名・発売元・内容などを表示して商品に貼りつける紙の札。商標。 (3)ある人物や物事についての断定的な評価。「―を貼る」 (4)安保…
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<第8回>「弾薬」はいつの間に「武器」に含まれなくなったのか
昔、ドイツ語の試験で「持ち込み可」という条件でドイツ人の友人を持ち込んだという話を聞いて驚愕した覚えがある。ルールには国語的な意味だけでなく、ルールが制定された目的や規範としての限界があるはずだ。し…
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<第7回>法律の世界で自分でルールを作るのは許されない
野球選手が、自分で「ルール=基準」を作ってプレーできてしまえば、もはや何でもアリである。前回、自衛隊の後方支援が武力行使になるかの判断基準は「武力行使と一体化」しているか否かであると論じた。次に、「…
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<第6回>米国への後方支援は武力行使そのものだ
読者の方にアンケートをとりたい。 〈自衛隊が後方支援として「発艦直前の米軍の戦闘機に給油・弾薬の提供をすること」は、米軍の武力行使と「一体化」しているか。YESかNOか?〉 憲法9条1…
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<第5回>米軍の兵站を担う後方支援活動も「違憲」である
今回の安保法制について、私は「違憲3点セット」という分類をしている。(1)集団的自衛権の違憲(2)後方支援の違憲(3)自衛隊の武器使用の違憲をあわせて、違憲の“3点セット”である。 このうち…
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<第4回>「専守防衛に変更はない」という首相答弁はウソだ
日本国憲法9条の下で許される自衛権に看板をつけるとしたら、それは「専守防衛」である。この看板を掲げる個別的自衛権は、「必要最小限度」等の制限により、国際法上の個別的自衛権よりもさらに狭い「限定的」個…
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<第3回>武力行使に歯止めなし 新3要件は法律に明記がない
安倍政権は、変わったものを変わっていない、あるものをない、できるものをやらない等と強弁しているが、今回は書かれていないものを「書いてある」と言っていることを問題にしたい。書いていないのが“日替わりラ…
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<第2回>ただの妄想の法案化 “存立危機事態”に立法事実なし
新たな法を制定するときには、その法の制定の必要性を支える「立法事実」が存在する。「立法事実なき立法」は、ただの妄想であり、いわんやこれが違憲の問題にわたる場合は、ただの「悪夢」である。 今回…
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<第1回>「必要最小限度に…」の礒崎補佐官の弁明は口先だけ
「法的安定性は関係ない」と言い放った礒崎陽輔首相補佐官は、3年前から、「立憲主義」は「意味不明」であるといった反知性的“放言”を繰り返してきた。とはいえ、国会に参考人招致された礒崎氏は問題発言を取り消…