検察vs政界 経済事件記者の備忘録
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【金丸脱税事件】異聞(27)宮沢首相と後藤田法相の「金丸嫌い」が捜査にプラスに働いた?
金丸信は当時78歳という高齢で、病気がちでもあった。1993年3月6日午後の首脳会議での逮捕方針の報告を受けた段階で、実現するかどうかは別にして、法相や首相がそれを理由に逮捕ではなく在宅捜査にするよ…
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【金丸脱税事件】異聞(26)「博打」の金丸捜査に後藤田法相は口を出さなかった
田中角栄逮捕前日の1976年7月26日午後、検察首脳会議で田中の逮捕方針を決めた検察は、当時の検事総長、布施健が法相の稲葉修に逮捕状を請求したいとして指揮を仰ぎ、稲葉は許可した。 野党は、検…
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【金丸脱税事件】異聞(25)大物政治家への検察捜査 歴代の法相はどう動いたか?
もうひとつの疑問は、金丸信に対する検察の捜査を知った法相の後藤田正晴、そして首相の宮沢喜一が、検察に対する指揮権を持ちながら、法務・検察に注文をつけた形跡がまったくなかったことだ。 検察庁法…
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【金丸脱税事件】異聞(24)宮沢首相、後藤田法相でなければ金丸逮捕はなかった?
金丸信の逮捕で、ずっと引っかかっていたことがある。1993年3月5日夜、最高検検事の石川達紘から「明日、動きがある」と聞いただけの首相秘書官の中島義雄が翌6日朝、検察とタッグを組んで金丸脱税を調査し…
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【金丸脱税事件】異聞(23)日債銀破綻と経営陣の逮捕 元捜査部長の感慨
1980年代から不動産やノンバンクへの大口融資で収益を積み上げてきた日債銀はバブル崩壊で巨額の不良債権を抱え、98年12月に破綻。直前に同様に破綻した日本長期信用銀行(長銀)とともに一時国有化され、…
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【金丸脱税事件】異聞(22)小針・福島交通会長に教えられワリシン購入
金丸信は特捜部の取り調べに対し、ワリシン購入のきっかけについて以下のように供述した。 「昭和60(1985)年ころ小針さんから『(ワリシンは)無記名であり、誰のものか分かりにくいもので安心でき…
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【金丸脱税事件】異聞(21)「小さな政商」小針暦二と日債銀の物語
金丸信の脱税事件摘発は、政官財利権に巣くう人物の存在を改めてクローズアップした。「でかくはねえが小さい政商みたいな人」(1992年11月27日衆院予算委員会の臨床尋問)と金丸自身が形容した福島交通会…
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【金丸脱税事件】異聞(20)段ボール4箱に入った現金10億円…計数機がオーバーヒートする一幕も
金丸信は特捜部副部長の熊崎勝彦の取り調べに対し、87年に首相の座に就いた盟友、竹下登のため86年暮れから87年夏にかけて数億円のカネを国会議員らに使ったこと、自宅のタンスやベッドと窓の間の空間で企業…
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【金丸脱税事件】異聞(19)主任検事を引き受けた苦労人の熊崎副部長は金丸とはウマがあった
財政担当副部長に金丸脱税事件捜査の主任検事になることを断られた特捜部長の五十嵐紀男は、特殊直告担当副部長の熊崎勝彦に「主任検事になって金丸本人の取り調べも担当してくれないか」と頼んだ。 特殊…
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【金丸脱税事件】異聞(18)財政担当副部長は「法務省の課長になるので遠慮させて」
前年(1992年)秋、金丸信の5億円闇献金事件の処分を終えた東京地検特捜部は、その5億円の使途にからむ政治資金規正法違反(寄付の量的制限違反や不記載)や所得税法違反(脱税)容疑で金丸や経世会所属の衆…
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【金丸脱税事件】異聞(17)特捜部副部長が事件の「主任検事」になるのを拒否した理由
金丸脱税事件の捜査に戻る。 1993年1月22日、捜索令状なしで日債銀に乗り込んだ特捜検事の井内顕策が、金丸関係の取引内容を説明してくれ、と申し入れると、日債銀側は「これに基づいて説明します…
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【金丸脱税事件】異聞(16)「石川さんなら大蔵・国税の事情をわかってくれる」と国税幹部らは考えた
石川達紘=杉井孝コネクションを通じ、筆者には大きな窓が開いた。大蔵省は福祉から防衛まで国の政策全般にかかわる情報の宝庫だとわかった。 杉井は茫洋とした「大人」のふうを装っているが、実際は繊細…
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【金丸脱税事件】異聞(15)石川達紘と大蔵キャリアの権力人脈 その一端が見えた「勉強会」
最高検検事の石川達紘に対してなぜ国税幹部らは一目置いていたのか。それは、石川が脱税事件の捜査に積極的だっただけではない。石川には大蔵・国税に特別なコネクションがあったからだ。大蔵事務次官候補といわれ…
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【金丸脱税事件】異聞(14)検察と国税の結束強めた伊藤栄樹と磯辺律男
大所帯の国税当局では時々、不心得者が出る。検察が、国税マンを収賄容疑で逮捕することも珍しくない。多くは国税側が端緒をつかみ、両機関が腹を合わせて事件にするが、検察が問答無用で国税局を捜索し両機関が険…
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【金丸脱税事件】異聞(13)石川達紘はなぜ金丸脱税摘発のキーマンになりえたのか
金丸脱税捜査に踏み込む前に、少し脱線して、最強の官僚権力といわれる検察と国税当局、正確にいえば、「法務・検察」と「大蔵・国税」の当時の関係について触れておきたい。それは先に、筆者が「石川達紘が、金丸…
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【金丸脱税事件】異聞(12)失地回復を考えていた五十嵐特捜部長。「俺はついてる」
国税庁の野村興児査察部長と石井道遠査察課長が持ち込んだ日債銀作成の1枚紙。それを見た石川は、金丸側が政治資金規正法違反か、所得税法違反(脱税)に問われる可能性のある重要証拠だとすぐ理解した。政治資金…
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【金丸脱税事件】異聞(11)マルサの係官が日債銀から秘かに持ち帰ったコピーが端緒に
検察が金丸脱税事件を摘発できたのは、国税当局の力に負うところが大きかった。脱税立件につながる簿外蓄財の証拠を入手し、検察に提供したのだ。 国税当局は、前年の92年秋、金丸の5億円闇献金事件を…
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【金丸脱税事件】異聞(10)法務省は金丸脱税捜査を承知していた 政権与党幹部にゴマをする幹部も
捜査情報は漏洩していたのだろうかーー。 法務省幹部の一部はかなり早い段階から、特捜部が金丸の脱税捜査をしていることを知っていた。 「もちろん、省内では緘口令。金丸逮捕の報を聞いて、特…
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【金丸脱税事件】異聞(9)移動されていた金庫。捜査情報が漏洩していたのか?
1993年の3月6日午後3時32分、衆院予算委員会で予算案通過。午後4時2分、本会議開始で議場が閉鎖されるのを待って特捜部は捜索令状を請求した。捜索は午後4時半に始まった。 金丸らの身柄拘束…
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【金丸脱税事件】異聞(8)情報の漏洩恐れ、上司の検事長を出し抜いた五十嵐特捜部
国会では新年度の予算審議が大詰めを迎えていた。法務・検察は捜査手続きが国会審議に影響を及ぼさないよう細心の注意を払う。検察が金丸らを脱税容疑で立件することは、3月4日の検察首脳会議で決まった。5日に…