あいつらの末路
-
(70)レインコートに赤いなにかが
うん? ちょっと待って。話を整理すると。私の元旦那と景子さんの現旦那が同一人物で、結婚詐欺を生業にしている詐欺師。さらにそいつは睦代さんまでも餌食にしようと、ラグジュアリーホテルの高層階で睦代さんと…
-
(69)添付されていた画像は元旦那
元旦那の画像? そんなの、全部削除しちゃったわよ。……あ、一枚だけ、残っていた。はじめての食事のときに撮ったやつ。それを送ると、 『やっぱり、私の勘は正しいようです。この画像を見てください』 …
-
(68)景子さんが闇バイトを!?
「何度も言うけど、マジで今日は安静にしておいたほうがいいよ」 さくらちゃんの言う通りだろう。それでもスマートフォンの着信が気になり、朝美は「いたたたたた」と呻きながら、それを手にした。 …
-
(67)変な夢でも見たんじゃない
うん? ここはどこだろう? あ、そうか。ハワースの丘だ。私、ハワースの丘に来てたんだ、景子さんに会いに。景子さん、景子さん、いますか? あ、あれは景子さんじゃない? そうよ、あの頭は景子さん…
-
(66)紋次郎、お仕置きだよ!
地鳴りのような音が鳴り響く。 スマートフォンになにか着信があったようだ。しかし、スマートフォンはテーブルの上で、今の朝美は自力でそれを取りに行くことは叶わない。 「あ、さくらちゃん、ス…
-
(65)二人揃って私を責めるんだよ
「どうしたの、おばさん」 さくらちゃんが、視線を返してきた。 「さくらちゃん、ニュース……」 朝美が言うと、「ああ」とさくらちゃんは老人のように眉をひそめた。 「なんか、ハ…
-
(64)おにぎりの中に血が!?
「大丈夫だよ。未成年者略取は親告罪だから。あたしが訴えない限り、おばさん罪にとわれないから」 いやいや、そういう問題ではなくてさ。 「ご両親に、ちゃんと連絡して。今日はここに泊まるって」…
-
(63)ニュースを見ても驚いた様子もなく
本当に完璧だ。紋次郎は一日、二食。一食分は二十五グラム。 「猫ちゃん、お水をあまり飲まないみたいなので、マグロの水煮もあげておいたよ」 重ね重ね、完璧だ! というか、どうしてそんなに機…
-
(62)あっちに行って、来ないで!
さくらちゃん、なにをしているの? え? なに? なにを持っているの? ナイフ? ……包丁? まさか、紋次郎になにかした? そうなのね? 紋次郎になにかしたのね! …
-
(60)あたし、家出してきたんだ
「まあ、話すと長くなるんだけど」 さくらちゃんは朝美の服をまくると、腰のあたりに湿布をぺたりと貼った。 ああああ。 朝美は、温泉につかったサルのように、一気に緊張をほぐした。こ…
-
(59)頭の中は痛みで充満
朝美は、中腰のまま、フリーズした。 「大丈夫ですか?」「どうしたんですか?」 女性と男性が、一斉に声をかけてきた。 が、答えることはできない。一言でも言葉を発したら、その振動で…
-
(58)トクリュウによる強盗か
【初雪と陸の孤島】 11月18日午前7時20分ごろ、Y県破輪洲市ハワースの丘3丁目21の住宅敷地内で血まみれの男女が倒れているのが発見された。男性のほうはこの住宅に住む会社員の増井智也さん(4…
-
(57)ドアスコープの向こうに警察
ピンポーン。 いつのまにか、陽はどっぷり暮れていた。時計を見ると、五時を過ぎたところだ。 「こんな時間に誰? 宅配便? いや、でも、なにも頼んでないけど。……っていうか」 私、…
-
(56)ハワースの丘で殺人事件!?
──Y県破輪洲市ハワースの丘3丁目21の住宅敷地内で18日午前7時20分ごろ、近隣住民の男性から「大量の血が流れている」と110番通報があった。破輪洲署によると、2階建て住宅の玄関付近で、血まみれの男…
-
(55)やっぱり連載は断ろう
「いやだ、こんな時間!」 いつのまに寝てしまったのか、目を開けると、窓の外はすっかり明るかった。カーテン越しに強烈な西陽が差し込んでいる。 午後三時。昼まで寝ることはよくあるが、さすが…
-
(54)紋ちゃんを全身で抱きしめる
「そう、気のせいだよ。……ね、紋ちゃん」 深夜になっていた。ようやく我が家に辿り着いた朝美は全身を使って愛猫との戯れに熱中していたが、やはり気になるのはあのとき見かけた人物のことだった。 …
-
(53)母親がサイババに会いにいくと
「そうよ。あの人のわけがない」 新宿行きの快速に揺られながら、朝美は何度もそう自分に言い聞かせていた。時計を見ると午後十時になろうとしている。 しかし、今日はとんだ一日だった。目的は果…
-
(52)あの人がここにいるわけない
万事休すと天を仰いでいると、音楽が聞こえてきた。聞き覚えのある曲だ。公共放送のニュース番組のオープニングではないだろうか? 見ると、テレビがついている。いつのまにか、管理人さんがつけたようだ。 …
-
(51)さくらは素直に買えり支度
なにげに腕時計を見てみると、 「え? もう、六時!?」 朝美は、腰を浮かせた。 「おばさん、もしかして、まだ帰ろうとしてます?」 頷くと、 「往生際が悪いですね。今…
-
(50)借金取りも大勢来ましたね
「今思えば、本当に夜逃げだったんでしょうね。家財道具、すべてそのままでしたから。それに、借金取りも大勢、来ましたからね。……本当に怖かった」 管理人さんが、当時を思い出したのか、目尻に涙を滲ま…