NHK時代劇「かぶき者 慶次」に学ぶ“リタイア世代”の生き方
【連載コラム 「TV見るべきものは!!」】
「水戸黄門」が終了して4年。時代劇は民放のレギュラー枠から姿を消したままだ。しかし、この「水戸黄門」をはじめ、「暴れん坊将軍」や「遠山の金さん」などの勧善懲悪的ワンパターンが、時代劇の衰退に拍車をかけたことも事実なのだ。
そんな中、NHKの木曜時代劇は貴重な場となっている。最近の「銀二貫」や「ぼんくら」などは、時代劇という“器”を使った人間ドラマとしてよく出来ていたし、現在放送中の「かぶき者 慶次」も同様である。
主人公は前田利家の甥である前田慶次(藤竜也)だ。前田家を出奔して上杉家に仕官。晩年を米沢で過ごしたという戦国の傾奇(かぶき)者だ。石田三成の遺児・新九郎(中村蒼)を息子と偽って育てながら、目立たずひっそりと暮らしている。しかし、上杉家と新九郎を脅かす者に対しては断固として戦う。それもかつて猛将として恐れられたにもかかわらず、人間力を発揮しての戦いだ。
経験、知恵、胆力、そして信念こそが慶次の武器である。たとえばリタイアした世代にとって、慶次の生き方はひとつのロールモデルかもしれない。主演の藤竜也はもちろんシブいが、脇役たちも魅力的だ。慶次を支える下男・又吉が火野正平。徳川の間者で強敵の天徳和尚は伊武雅刀である。物語は今週を含め、数回を残すのみ。終盤だけでも見ておく価値はある。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)