「雁の寺」はミステリー映画 虐待坊主はどこに消えたのか
1962年 川島雄三監督
原作は水上勉の直木賞受賞作。寺に預けられてつらい思いをした実体験をもとにしている。
1933(昭和8)年、京都の寺「孤峯庵」の住職・慈海(三島雅夫)は画家の愛人だった里子(若尾文子)を内縁の妻に迎えた。寺には慈念(高見国一)という13歳の小坊主がいて、彼は自分の出自を知られるのを恐れている。横暴な慈海は慈念の手に縄を結び、寝床から引っ張って呼びつける。里子は虐待を受ける慈念に同情し、体を与えてしまう。
檀家の一軒に死者が出た日、慈海が行方不明に。慈念によれば、慈海は雲水の旅に出たという。そこで慈念が葬儀を取り仕切るのだが……。
ミステリー映画だ。慈海はどこに消えたのか。その謎を観客はドキドキしながら見つめる。
慈海は里子の肉体にのめり込み、色狂いのようにもてあそぶ。慈念の返事が気にくわないと往復ビンタし、食べ物もろくに与えないドケチ。本物の破戒坊主だ。
里子は貧しい母から、家に帰ってきたら困ると言われる。一方の慈念は物乞いの女が産んだ捨て子だった。母親に見捨てられた男女2人が悪僧の世話になっている三角関係。だから三十女は少年に心を寄せるのだ。