「駅 STATION」高倉健と3人の女が織りなす別れのドラマ
1981年 降旗康男監督
結末を知っていても感動できる映画がある。本作もそうした一本。倉本聰が高倉健の50歳の記念として脚本を書いた。1968~80年の12年間の物語だ。
北海道警の刑事・三上(高倉健)は射撃の五輪選手。過ちを犯した妻直子(いしだあゆみ)と離婚して駅で見送る。まもなく同僚刑事が連続殺人犯に射殺され、犯人は行方をくらます。
76年夏。増毛駅近くで若い女性の通り魔事件が起きた。三上は応援に加わり、食堂で働くすず子(烏丸せつこ)の兄・五郎(根津甚八)を犯人とにらんで捜査を開始。すず子は「トロい」「ちょっと足りない」といわれる女の子。このすず子を妊娠させた不良・雪夫(宇崎竜童)の協力で警察は五郎を逮捕する。
79年冬。増毛に宿泊した三上は桐子(倍賞千恵子)の居酒屋に立ち寄り、大晦日の夜、初詣の神社で桐子は一人の男を見つめるのだった……。
高倉健が主役だが、一種の女性映画だ。3人の女が三上に絡んでドラマを作り上げていく。泣きながら敬礼して別れを告げる直子、幼稚なしゃべりで警察を惑わすすず子、誰かの帰りを待ちながら懸命に生きる桐子。女3人と三上の関わり合いに事件で発砲する緊迫感と円谷幸吉の遺書を織り交ぜて話は進む。増毛駅周辺の若者の無軌道ぶりともてあそばれた女の哀れさは日本全国の町で見かける風景だ。不良が結婚して良きパパとなり、傷ついた女がその地でけなげに生きるのも同じだろう。