五木寛之 流されゆく日々
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連載11049回 嵐の前の静けさか松の内 <3>
(昨日のつづき) 米国のコロナ感染者数、2063万9219人。死者、35万1580人。 とほうもない数字だ。人口のちがいはあっても、わが国の感染者24万9000人、死者3700人弱とくらべると…
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連載11048回 嵐の前の静けさか松の内 <2>
(昨日のつづき) 正月は私にとって、すこぶる気の重い時期である。その最大の問題は年賀状だ。 世間には毎年とどく賀状を楽しみにしておられるかたもいらっしゃることだろう。そういうかたは、ご自分もち…
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連載11047回 嵐の前の静けさか松の内 <1>
コロナの嵐の中に新年が明けた。 米国の感染者は2000万人を超え、死者の数も35万人に達する勢いである。 それでもおおかたの予測では、今年の5月頃には鎮静化するということらしい。それぐらい楽…
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連載11046回 コロナの一年をふり返る <6>
(昨日のつづき) どうやら新しい鎖国がはじまったようだ。 政府は変異種コロナの予防のために、全世界からの新規入国を禁止。 新しい年を迎える間際に、新造ワクチンと変異コロナの激闘が開幕する。…
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連載11045回 コロナの一年をふり返る <5>
(昨日のつづき) 「来年はどうなるんでしょうね」 と、いった質問をしばしば受けることがある。 「マサカ、マサカの連続だと思うよ」 「先行きが見えないということですか」 「だって、毎年、年末…
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連載11044回 コロナの一年をふり返る <4>
(昨日のつづき) 毎日のニュースを見ていると、エッ、と驚くことが山ほどある。 なんとなくわかってはいるが、あらためて数字で示されるとショックを受けるのだ。 厚生労働省によると、 「高卒で…
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連載11043回 コロナの一年をふり返る <3>
(昨日のつづき) コロナの一年をふり返る、どころではなくなってきた。 欧州もアメリカも、ワクチンだのみでは済まなくなってきた様子。 しかし、連日の感染者数の増加にもかかわらず、街には人があ…
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連載11042回 コロナの一年をふり返る <2>
(昨日のつづき) 師走を迎えてもコロナの勢いはおとろえない。それどころか欧米をはじめ、世界各地では第3波、第4波が猛威をふるっている様子。 きょうの朝刊では、英国での変異種コロナの拡大がそろっ…
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連載11041回 コロナの一年をふり返る <1>
2020年も、あますところ10日あまりとなった。 冷静にふり返ってみると、今年は未曽有の一年だったと言えるかもしれない。 よくリーマンショック以来の、とか、そんなふうに表現されたりする。はた…
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連載11040回 アクセルとブレーキ <5>
(昨日のつづき) この数年、ずっと左脚の痛みに悩まされてきた。膝関節の軟骨がすり減っているのは加齢のせいで、仕方がないと諦めている。数年前に受けた診断では、変形性股関節症ということだった。どちらに…
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連載11039回 アクセルとブレーキ <4>
(昨日のつづき) 古い資料を整理していたら、車を運転していた頃の昔の写真が沢山でてきた。 ヨーロッパを車で横断したときのスナップなどもある。ローマからイスタンブールへ車を走らせるテレビ番組のス…
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連載11038回 アクセルとブレーキ <3>
(昨日のつづき) きょう12月15日の新聞朝刊各紙は、<Go To トラベル 全国停止>の大合唱だ。 1面トップの大見出しは、敗戦の日の新聞を連想させる迫力。 それまで全開にしていたアクセ…
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連載11037回 アクセルとブレーキ <2>
(昨日のつづき) 政治家とは政治のプロであるべきだ。 実際にそうであるかないかは別として、そうでなくては困る。 アクセルだけを踏みっぱなしでは運転はできない。といってブレーキを踏んでいるだ…
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連載11036回 アクセルとブレーキ <1>
12月も半ばである。今年は特別な年だ。新型コロナ感染者の数が、全世界で7000万人をこえた。 死者の数も160万あまりに達している。 なんといってもアメリカは凄い。1600万ちかい感染者と、…
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連載11035回 「本願ぼこり」と親鸞の呟き <5>
(昨日のつづき) 「本願ぼこり」は、宗門内の言葉で、一般には「造悪説」と呼ばれる。 悪人正機の教えを曲解して、悪をなせばなすほど救いがあるとする立場だ。当然、それは正統的な真宗の立場からは厳しく…
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連載11034回 「本願ぼこり」と親鸞の呟き <4>
(昨日のつづき) 「本願ぼこり」という耳なれない言葉について書くのは、仏教用語の解説のまねではない。かつて戦後の一時期、イデオロギーが「本願」であった時代があった。 「本願ぼこり」は「イデオロギー…
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連載11033回 「本願ぼこり」と親鸞の呟き <3>
(昨日のつづき) また12月8日がやってきた。 12月8日。 それは私たち戦争の時代に育った世代にとっては、忘れることのできない特別な日だ。 昭和16年12月8日。 「昭和」で言って…
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連載11032回 「本願ぼこり」と親鸞の呟き <2>
(昨日のつづき) 宗門では「本願ぼこり」と称するが、これは、「本願誇り」のことだろう。 それまで官製仏教の枠外におかれて、生きて地獄、死んで地獄、と絶望しきっていた底辺の人びとがいた。 い…
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連載11031回 「本願ぼこり」と親鸞の呟き <1>
「本願ぼこり」という言葉がある。 法然、親鸞の時代に、「悪人正機」という思想が人びとを驚かせた。 救いを求め、わが名を呼んで帰依する者すべてを助けるという驚天動地の教えである。世にいう悪人、非…
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連載11030回 古い背広で心も軽く <5>
(昨日のつづき) 最近の新聞を見てみると、昭和期の流行歌、いわゆる懐メロのシリーズの広告が目立つ。 一ページでどーんと大きな全集の広告が出るのは、それなりに需要があるからだろう。 テレビで…