五木寛之 流されゆく日々
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連載10973回 コロナの風に抗して <4>
(昨日のつづき) 2日目の広島。きょうは7時30分に目が覚めた。午前7時30分である。昨年までの生活なら、やっとベッドに入る時間だ。 コロナの時代にはいって、宇宙のリズムが狂ったのだろうか。5…
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連載10972回 コロナの風に抗して <3>
(昨日のつづき) きょうはピカピカの晴天。午後1時にホテルを出て会場へ。 予定では2000名の会だったのだが、コロナの関係で1000名ずつ2日に分けて行うことになったのだ。 会場入口で熱を…
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連載10971回 コロナの風に抗して <2>
(昨日のつづき) きょうは広島へ行く。 今年にはいって新型コロナのせいで、3、4、5、6、7、8月と、計13件の催しが中止になっている。文学賞の受賞式あり、講演あり、研究会ありで、そのすべてが…
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連載10970回 「回想」のなかの人びと <1>
こんど中公新書ラクレで新しい本が出ることになった。『回想のすすめ』という「すすめ」シリーズの一冊である。 見本が届いたのでパラパラとめくってみると、日刊ゲンダイの『流されゆく日々』から7篇がピッ…
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連載10969回 コロナ時代の養生法 <5>
(昨日のつづき) 何度も同じことを書くようだが、私にとって「養生」は趣味であり「道楽」である。したがって命懸けでやるものではない。 きょうはなんとなく面倒だな、というときは、あっさり諦める。1…
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連載10968回 コロナ時代の養生法 <4>
(昨日のつづき) ためしに吸う息で口笛を吹いてみる。かすかな音が出ることは出るが、ほとんど雑音にちかい。 やはりちゃんとした音階を出そうと思えば吐く息だ。試みにどれだけ長く口笛を吹けるかをため…
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連載10967回 コロナ時代の養生法 <3>
(昨日のつづき) さて、釈尊の教えをまとめた『仏説大安般守意経』というお経がある。お経というのは呪文ではない。苦の世界に生きるノーハウを丁寧に説いたテキストだ。『大安般守意経』などと難しいタイトル…
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連載10966回 コロナ時代の養生法 <2>
(昨日のつづき) 私はいま厄介な問題を抱えている。左脚の不具合いである。 数年前から歩くときに痛みを感じるようになった。若い頃から健脚自慢で、足にはいささか自信があっただけにショックだった。 …
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連載10965回 コロナ時代の養生法 <1>
「養生」と「健康法」はちがう、というのが私の持論である。 どうちがうかは、べつに理論があるわけではない。ただなんとなく健康法というのは実利的なもの、という感じがある。それにくらべると、養生というの…
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連載10964回 無事これ名馬、とは? <5>
(昨日のつづき) 交通事故は必ずしも本人の責任ではない場合も多い。運、ということもたしかにある。 しかし、その何十パーセントかは注意すれば防げたかもしれないのだ。 たとえば風邪薬や催眠薬を…
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連載10963回 無事これ名馬、とは? <4>
(昨日のつづき) 一般ドライバーだけでなく、この国ではプロのドライバーにも問題は少くない。 病的に車間距離をとらない運転者がいる。それは一種の癖なのかもしれない。前の車にキスしかねない位に車間…
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連載10962回 無事これ名馬、とは? <3>
(昨日のつづき) 6・3SELの話の続きである。 この車はどこといって目立つところのないセダンで、ごく普通の乗用車のような外観である。後部トランクのうしろに、控え目に6・3SELとあるだけだ。…
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連載10961回 無事これ名馬、とは? <2>
(昨日のつづき) 米国大統領選もいよいよ盛り上ってきたようだ。バイデン陣営は、初の黒人女性副大統領候補を押し立てて、やや鮮度が高まったかに見える。人品骨柄、申し分ない知的なバイデン候補だが、いかん…
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連載10960回 無事これ名馬、とは? <1>
車の運転が巧いとか下手というのは、よく言われることである。 男女を問わず「運転が下手」というのは、かなり大きな減点の要素だ。しかし、本当の良いドライバーというのは、事故をおこさない人のことではな…
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連載10959回 記憶が風化していく <5>
(昨日のつづき) 先日、自分でも呆れるような失敗をした。 ある出版社の編集者と昔の話をしていて、敗戦の日の自分の記憶を述べたあとに、ふと何気なく聞いてしまったのだ。 「ところで君は終戦の日は…
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連載10958回 記憶が風化していく <4>
(昨日のつづき) ロシアが開発したというコロナ・ワクチンに、いたく米国が反発しているようだ。 プーチン氏がわざわざ自分でテレビに出て発表したのは、相当の気負いがあったはず。 しかし、その新…
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連載10957回 記憶が風化していく <3>
(昨日のつづき) 東條首相が開戦か否かを決める重要な御前会議に向かうとき、乗っていた公用車がアメリカ製の39年式ビュイックだったという話には、思わず苦い笑いがこみあげてくる。 その車の運転手の…
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連載10956回 記憶が風化していく <2>
(昨日のつづき) ゲリラ豪雨に落雷、猛暑と三拍子そろった真夏だが、今年はコロナと熱中症がさらに追い打ちをかけている。 40度をこえる猛暑にマスク、ステイホームとくれば、のんびり夕涼みというわけ…
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連載10955回 記憶が風化していく <1>
言葉より文章のほうが信頼度が高い、というのが一般の考え方だろう。 資料を重視するというのも、よくある傾向である。しかし、人は誰しも文章化する時は、いろんなことを忖度する。その文章が及ぼす影響のこ…
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連載10954回 新聞記事の片隅から <4>
(昨日のつづき) 昨日の原稿で「年長娘」という表現について、疑問を呈したら、早速、読者のかたからアドバイスがあったそうだ。 3年保育の幼稚園では一般に就学期の5~6歳児を「年長さん」とか、「年…