五木寛之 流されゆく日々
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連載10969回 コロナ時代の養生法 <5>
(昨日のつづき) 何度も同じことを書くようだが、私にとって「養生」は趣味であり「道楽」である。したがって命懸けでやるものではない。 きょうはなんとなく面倒だな、というときは、あっさり諦める。1…
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連載10968回 コロナ時代の養生法 <4>
(昨日のつづき) ためしに吸う息で口笛を吹いてみる。かすかな音が出ることは出るが、ほとんど雑音にちかい。 やはりちゃんとした音階を出そうと思えば吐く息だ。試みにどれだけ長く口笛を吹けるかをため…
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連載10967回 コロナ時代の養生法 <3>
(昨日のつづき) さて、釈尊の教えをまとめた『仏説大安般守意経』というお経がある。お経というのは呪文ではない。苦の世界に生きるノーハウを丁寧に説いたテキストだ。『大安般守意経』などと難しいタイトル…
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連載10966回 コロナ時代の養生法 <2>
(昨日のつづき) 私はいま厄介な問題を抱えている。左脚の不具合いである。 数年前から歩くときに痛みを感じるようになった。若い頃から健脚自慢で、足にはいささか自信があっただけにショックだった。 …
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連載10965回 コロナ時代の養生法 <1>
「養生」と「健康法」はちがう、というのが私の持論である。 どうちがうかは、べつに理論があるわけではない。ただなんとなく健康法というのは実利的なもの、という感じがある。それにくらべると、養生というの…
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連載10964回 無事これ名馬、とは? <5>
(昨日のつづき) 交通事故は必ずしも本人の責任ではない場合も多い。運、ということもたしかにある。 しかし、その何十パーセントかは注意すれば防げたかもしれないのだ。 たとえば風邪薬や催眠薬を…
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連載10963回 無事これ名馬、とは? <4>
(昨日のつづき) 一般ドライバーだけでなく、この国ではプロのドライバーにも問題は少くない。 病的に車間距離をとらない運転者がいる。それは一種の癖なのかもしれない。前の車にキスしかねない位に車間…
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連載10962回 無事これ名馬、とは? <3>
(昨日のつづき) 6・3SELの話の続きである。 この車はどこといって目立つところのないセダンで、ごく普通の乗用車のような外観である。後部トランクのうしろに、控え目に6・3SELとあるだけだ。…
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連載10961回 無事これ名馬、とは? <2>
(昨日のつづき) 米国大統領選もいよいよ盛り上ってきたようだ。バイデン陣営は、初の黒人女性副大統領候補を押し立てて、やや鮮度が高まったかに見える。人品骨柄、申し分ない知的なバイデン候補だが、いかん…
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連載10960回 無事これ名馬、とは? <1>
車の運転が巧いとか下手というのは、よく言われることである。 男女を問わず「運転が下手」というのは、かなり大きな減点の要素だ。しかし、本当の良いドライバーというのは、事故をおこさない人のことではな…
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連載10959回 記憶が風化していく <5>
(昨日のつづき) 先日、自分でも呆れるような失敗をした。 ある出版社の編集者と昔の話をしていて、敗戦の日の自分の記憶を述べたあとに、ふと何気なく聞いてしまったのだ。 「ところで君は終戦の日は…
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連載10958回 記憶が風化していく <4>
(昨日のつづき) ロシアが開発したというコロナ・ワクチンに、いたく米国が反発しているようだ。 プーチン氏がわざわざ自分でテレビに出て発表したのは、相当の気負いがあったはず。 しかし、その新…
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連載10957回 記憶が風化していく <3>
(昨日のつづき) 東條首相が開戦か否かを決める重要な御前会議に向かうとき、乗っていた公用車がアメリカ製の39年式ビュイックだったという話には、思わず苦い笑いがこみあげてくる。 その車の運転手の…
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連載10956回 記憶が風化していく <2>
(昨日のつづき) ゲリラ豪雨に落雷、猛暑と三拍子そろった真夏だが、今年はコロナと熱中症がさらに追い打ちをかけている。 40度をこえる猛暑にマスク、ステイホームとくれば、のんびり夕涼みというわけ…
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連載10955回 記憶が風化していく <1>
言葉より文章のほうが信頼度が高い、というのが一般の考え方だろう。 資料を重視するというのも、よくある傾向である。しかし、人は誰しも文章化する時は、いろんなことを忖度する。その文章が及ぼす影響のこ…
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連載10954回 新聞記事の片隅から <4>
(昨日のつづき) 昨日の原稿で「年長娘」という表現について、疑問を呈したら、早速、読者のかたからアドバイスがあったそうだ。 3年保育の幼稚園では一般に就学期の5~6歳児を「年長さん」とか、「年…
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連載10953回 新聞記事の片隅から <3>
(昨日のつづき) 今朝も6紙を、時間をかけてじっくり読む。ほぼ2時間30分ほどの間に、朝日、毎日、読売、産経、日経、そして東京の各紙を眺めるのが最近の日課になった。夕方、日刊ゲンダイを30分ほどか…
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連載10952回 新聞記事の片隅から <2>
(昨日のつづき) 数日前の新聞に、世界各国の貧困率のことが出ていた。 <2017年のOECDの経済報告書によると、日本の相対的貧困率は、日米欧などの先進国7カ国中で、米国に次ぐ2番目の高さだった…
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連載10951回 新聞記事の片隅から <1>
毎朝、新聞を眺めていると、不思議に思われることや、腹の立つこと、そして思わず笑いだしたくなるような出来事が毎日のように報じられている。 コロナの流行以来、まともにダメージを受けた人たちや企業が数…
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連載10950回 コロナ情報の七不思議 <5>
(昨日のつづき) 東京都内の知人から、 「10万円、やっと届いたぞ。Go To キャンペーンの前にきたら旅行にいこうと思ってたんだが」 と、驚いたような電話があった。最後の最後まで本当に10…