五木寛之 流されゆく日々
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連載10296回 メタボが長生きの真偽 <3>
(昨日のつづき) きょうの日刊ゲンダイの28面には、《世界中で肥満が爆発的に増加する》という11段の大きな記事がのっていた。<3人に1人が太り過ぎ>という小見出しに続いて<6つの理由>があげられて…
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連載10295回 メタボが長生きの真偽 <2>
(昨日のつづき) こういう新聞の記事を読んで、たちまちそれまでの常識がくつがえるかといえば、そうでもない。健康情報というやつは、あえて言えば百人百説なのである。 医学界で権威とみなされるアメリ…
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連載10294回 メタボが長生きの真偽 <1>
きょうの毎日新聞(2017・11・19)を読んでいて、気になる記事が二つあった。 一つは1面左上段の囲み記事である。〈フレイル要介護リスク2倍〉〈都調査 メタボより影響大〉と、見出しもかなり大き…
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連載10293回 「マサカの時代」の行方 <5>
(昨日のつづき) 私たち旧世代は、さまざまな「マサカ」を体験してきた。年表や資料で知っているのとはちがう。実体験と研究の差は、決定的に異なるのだ。 歴史を学ぶことは大事だ。人は過去を知ることで…
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連載10292回 「マサカの時代」の行方 <4>
(昨日のつづき) 中国が北朝鮮に使節を派遣するという。大会の後に事後報告使を送るのがきまりになっていたそうだから、別に驚くことではない。 しかし、なんとなく周囲の期待は、トランプ訪中以後の中国…
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連載10291回 「マサカの時代」の行方 <3>
(昨日のつづき) 癌を告知された人の最初の反応は、「マサカ!」だろうと思う。「マサカ自分が癌に」というのが自然の反応だ。 最初は告げられた事実に実感がなく、ただ呆然と立ちすくむだけではあるまい…
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連載10290回 「マサカの時代」の行方 <2>
(昨日のつづき) 人力が馬力に変り、蒸気機関が石油内燃機関に変って、いままた大きなエネルギーの変換期にさしかかっている。 電気エネルギーの時代は、すでに汽車が電車に変った時点ではじまっていた。…
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連載10289回 「マサカの時代」の行方 <1>
東京の街を歩くたびに、なにか幻を見ているのではないか、と、ふと思うことがある。 右を見ても、左を見ても、巨大なビルが次々と建設中なのだ。 それも半端なビルではない。ガラスと軽金属張りの直線的…
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連載10288回 「孤独のすすめ」補稿 <9>
(昨日のつづき) 震災のあと、絆という言葉がさかんに言われた。たしかに荒廃した社会に必要なのは、人びとの結びつきである。 相互扶助の精神こそ、新しい自立の要だったにちがいない。しかし、自立とい…
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連載10287回 「孤独のすすめ」補稿 <8>
(昨日のつづき) 老人のユーモアというのは貴重なものである。それを発するほうにも、また受けるほうにも大きな価値があるのだ。 以前、沖縄にいったことがあった。そこで村の100歳ちかい長寿者をたず…
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連載10286回 「孤独のすすめ」補稿 <7>
(昨日のつづき) 老いというのは、人間だれでも受け入れなければならない宿命である。 老いについて、最近さまざまな提言が目立ってきた。スーパー老人、などという言葉もマスコミで目にすることが多い。…
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連載10285回 「孤独のすすめ」補稿 <6>
(昨日のつづき) モノはしょせんモノに過ぎない。 とはいうものの、そのモノにまつわる記憶は捨てがたい財産である。高齢者にとって絶対の資産は、はたして金銭だろうか。それとも不動産だろうか。 …
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連載10284回 「孤独のすすめ」補稿 <5>
(昨日のつづき) <断捨離>という言葉が一時、大流行したことがあった。 要するに不要なものを捨てようというすすめである。これが大きな反響を呼んだのは、人びとがモノに埋没してウンザリしているからだ…
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連載10283回 「孤独のすすめ」補稿 <4>
(昨日のつづき) 『孤独のすすめ』の終りのほうに、この小冊子には、いささかふさわしくない提言が二つ三つ述べてある。 そもそも政治や経済について全く無知な私が、国の将来について語ったりする資格はな…
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連載10282回 「孤独のすすめ」補稿 <3>
(昨日のつづき) 新書『孤独のすすめ』の第1章に、「諦める」という文章がある。 ふつう「諦める」といえば、物事を放棄する、手放す、もう駄目だと考える、といった状況を言うようだ。しかし、辞書にも…
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連載10281回 「孤独のすすめ」補稿 <2>
(昨日のつづき) 私の持論の一つが、「治」という字の読み方である。 「治」とは「治療」とか、「完治」とかというふうに、病気が「治る」の意味で使われることが多い。また「治す」とか「治癒」という用い…
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連載10280回 「孤独のすすめ」補稿 <1>
世の中はわからないものである。政治の世界が「一寸先は闇」だとは知っていた。 しかし、実際にはすべての事が、予測どおりには動かない。こと出版の世界もそうだ。 考えてみれば、すでに60年以上もメ…
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連載10279回 健康病という病い <5>
(昨日のつづき) 目を覚ますと、すぐに時計を見る人がいる。昨夜、何時間眠れたかが気になるのだ。 睡眠時間は5時間でよい、という情報もある。要するに良質の睡眠がとれたかどうかが問題だという。それ…
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連載10278回 健康病という病 <4>
(昨日のつづき) ヘルス情報からヘルシー情報へ。 この怒濤のような健康情報の物量は、最近ほとんど全ニュースの中心となった感がある。 しかも、その内容の多様性は呆れるくらいのものだ。正反対の…
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連載10277回 健康病という病 <3>
(昨日のつづき) 『日刊ゲンダイ』というのは、創刊時からずっと一貫して傾向的な夕刊だった。 たとえば政治だけでなく、すべてにわたって反体制、反権力という片寄りがある。むかし巨人が圧倒的に強かった…