五木寛之 流されゆく日々
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連載11734回 「今週読んだ本の中から」 <1>
この本をもし私が若い頃に読んでいたなら、決してジャズ小説など書かなかっただろう。そのかわり、熱烈なジャズファンとなり、作家ではなく、ささやかなジャズの店の経営者をめざしたかもしれない。 私はジャ…
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連載11733回 五木流養生の実技 <10>
(昨日のつづき) きょうは午後からNHKのスタジオで『ラジオ深夜便』の録音。 思えばはじめてラジオで喋ったときから、すでに60年以上が経過している。<ラジオ深夜便>も、もうこれでどれくらいたつ…
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連載11732回 五木流養生の実技 <9>
(昨日のつづき) 左脚の不調のほかに、いま私にとって気がかりな点は、喉になにやら腫れものができていることだ。ポリープという感じでもなく、食べものを飲みこむにしても、さほど抵抗があるわけでもないので…
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連載11731回 五木流養生の実技 <8>
(昨日のつづき) ここで、ちょっとお詫びを。 前々回の記事で、まぎらわしいところがあるので、あらためて記す。 扁平足の足裏は、親指側、つまり内側がぽってりと肉厚になっている。本来、足裏の内…
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連載11730回 五木流養生の実技 <7>
(昨日のつづき) 体との対話、というのが私のもっとも大事にしている養生の第一歩だ。 体は、絶えず私たち本人に語りかけている。いわゆる言葉とはちがう<身体語>を通じてである。 私たちは英語と…
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連載11729回 五木流養生の実技 <6>
(昨日のつづき) この連載は、ほぼ5回で一区切りというのが定番である。1週間ごとにテーマが変るのが、決まりというわけではないが、長年の習慣になっていた。 今回は例外的に2週にまたがることになっ…
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連載11728回 五木流養生の実技 <5>
(昨日のつづき) この10年来、私にとっての悩みの種は、下半身、すなわち脚部の不自由である。 何年か前に、<変形性膝関節症>と診断され、その後さらに<変形性股関節症>もあると言われた。歩くと脚…
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連載11727回 五木流養生の実技 <4>
(昨日のつづき) 体、すなわち身体は、絶えず私たちの心に向けて信号を発している。 それは普通、わたしたちが使用する言語とは違う言葉である。 いうなれば<身体語>とでも呼べるような信号である…
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連載11726回 五木流養生の実技 <3>
(昨日のつづき) いまどきの人々の抱えている問題、不安といってもいいが、それを<3K>と呼んだことがある。 <3K>とは、いまは過去の流行語になってしまった言葉だ。下位労働者の仕事の現場を端的に…
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連載11725回 五木流養生の実技 <2>
(昨日のつづき) 五木流養生の実技、などと偉そうな看板をかかげたが、実のところ単なる病院嫌いの言い訳にすぎないことは、読者諸子もお見通しだろう。 要はこの歳になっても、レントゲン撮影や注射やら…
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連載11724回 五木流養生の実技 <1>
思いがけず91歳まで生きた。 もう十分だろうと自分でも思うが、それでも一日でも健康に暮したい。痛みを抱えて、辛い思いをしながら生きるのは真平だ。 とはいうものの、加齢とともに体の各部に故障が…
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連載11723回 言葉は時代とともに <4>
(昨日のつづき) もう何十年も昔の話である。一通の手紙が届いた。差出人は知らない人である。 本を読んだ人が感想を書いてきたのだろうとも思ったが、なにやら不穏な感じがした。和紙の封筒に筆書きの文…
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連載11722回 言葉は時代とともに <3>
(昨日のつづき) 言葉の意味が時代によって変ってくるのもそうだが、もう一つ気になることがある。 それは話すスピードだ。これを何といえばいいのか。<話速>とでも勝手に呼んでおくことにしよう。 …
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連載11721回 言葉は時代とともに <2>
(昨日のつづき) 私が新人賞をもらって作家としてデビューしたのは1966年の春のことだった。実際にその小説を書きあげて新人賞に応募したのは1965年の秋である。 1967年になると、当時の中間…
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連載11720回 言葉は時代とともに <1>
先ごろ、毎日新聞を読んでいて妙に面白く感じた記事があった。 2022年に文化庁がおこなった世論調査の話である。その調査のなかに<国語に関する調査>というのがあったらしい。 調査というと、なん…
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連載11719回 雑誌「面白半分」の臨終 <5>
(昨日のつづき) このコラムの連載を読んで、 「リトルマガジンは今でも沢山でてるんじゃないですか」 と、ある編集者に言われた。 たしかにメジャーではないユニークな小雑誌は、沢山でている。…
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連載11718回 雑誌「面白半分」の臨終 <4>
(昨日のつづき) 『面白半分』の終刊号の「編集後記」は、冗談半分のなかにも無念さがにじんでいて、いま読むと感慨がわいてくる。 編集スタッフの筆頭、阿奈井文彦さん。 <★故『面白半分』誌、葬儀に…
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連載11717回 雑誌「面白半分」の臨終 <3>
(昨日のつづき) 『面白半分』の最終号(臨終号)に、田辺聖子さんが<腰巻大賞>のことを書いている。 <腰巻大賞>とは、私が編集長時代に創設した本のオビを対象とするフザケた賞だ。 この賞の第2回…
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連載11716回 雑誌「面白半分」の臨終 <2>
(昨日のつづき) 創刊号というのはおおむねそうだが、背延びしてきわめて豪華である。 初代編集長の吉行淳之介さんの顔もあってか、巻頭のエッセイ欄も、大岡昇平にはじまり、しんがりの開高健までなかな…
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連載11715回 雑誌「面白半分」の臨終 <1>
かつて、リトルマガジンの時代というものがあった。有力出版社が大量に発行する雑誌ではなく、どこからともなくボウフラのように湧いてきた小雑誌が幅をきかせた時代だ。 そんな風潮のなかで、かなり目立った…