スクープドッグ咆哮記「NHK巨額横領事件」編
-
<第17回>NHKは海老沢会長の辞任で何が変わったのか?
続出する不祥事。意に介さず居座り続ける海老沢会長に、世間の批判は激増、不払いは加速度的に激増し、最終的に100万件にまでいった。視聴者の怒りの声の多くは会長辞任を求めていた。 2004年10…
-
<第16回>「9月9日が“屈辱の日”であることを忘れるな」
手探りで取材を続けるなか、ついに2004年9月9日、海老沢会長の参考人招致が行われることになった。しかしこれこそが世間の集中砲火を浴びる結果となった。3時間以上にわたった総務委員会参考人招致を「我々…
-
<第15回>「中にはけしからんのもいる」で片づけた海老沢会長
私は「I氏事件」の莫大な横領金額からも、これはNHK全体の問題だと認識していた。第一報直後の2004年7月23日、海老沢会長は謝罪会見を開き、「辞めるつもりはない」と発言した。 しかしNHK…
-
<第14回>「局内に言論の自由はまったくない」
後に裁判でわかったNHKプロデューサーI氏の横領金額は、およそ2億円にのぼった。それは視聴者が負担する受信料からのものだ。しかしNHKは、事件が職員の調査によって3年前に発覚していたにもかかわらず、…
-
<第13回>組織を守るための最重要課題は密告者の洗い出しだ
事件の真相を証言したNHK職員X氏がかけてきた電話は不自然だった。最初のインタビューでの会話を「なかったことにしろ」と言う。まさかそんなことは言えるはずもない。 短い沈黙の後、X氏は話題を変…
-
<第12回>電話口の向こうの沈黙に「誰かに言わされているのでは…?」
NHKプロデューサーのI氏が不正経理で8000万円横領した事件をスクープした週刊文春。発売日(7月22日)の正午過ぎ、私は新橋の駅前にいて次の取材先へ向かっていた。炎天下、白いシャツ姿のサラリーマン…
-
<第11回>だまし討ちのような約束不履行に強い憤りを覚えた
私たち取材班は用意周到に準備し、一気呵成に取材攻勢をかけ、不備な点がないよう細心の注意を払い、きちんとウラを取った。わずか4人ながらも100%以上力を出し切ったつもりだ。「I氏事件」の有無については…
-
<第10回>NHK側の最大の関心事は「いつ記事が掲載されるのか」という点だった
NHK側も我々が動いた時点では、I氏事件がその屋台骨を揺るがすような事態にまで発展するとは考えていなかった。会長の“お庭番”の集まりで、選りすぐりのエリートが集まる部署とされる経営広報の取材からもそ…
-
<第9回>海老沢会長に直撃すると「本当に文春の記者か?下の名前は何?」
深夜のファミレスで対峙したNHK職員のX氏は最後にこう語った。 「上司には不正発覚を報告しましたが、業務の上で調査したつもりです。ただその後は僕の責任ではないと、いわば責任逃れをしたわけですか…
-
<第8回>震えた声で「あなた方の言う社会正義は貫いた方がいい」と…
――あなたはNHKのために不正を報告した。上司はI氏を当然処分するものと信じていた。なのに何も起こらなかった。 「……」 土曜日のざわついた店内。一番奥の私たちのテーブルだけが長い沈黙を…
-
<第7回>1万2000人の巨大メディアと“5人”の闘いが始まった
私は半年間、たったひとりでNHKの巨額横領事件を追っていた。いくつもの山を越え、やっと編集部から取材発進の了解を取り付けた。ここからが本番だ。 2004年7月15日木曜日。3人の若手記者が新…
-
<第6回>不正を証明する“動かぬ証拠”を抱いてベッドで寝た
A氏とB氏の詳細かつ具体的な証言により、巨額横領事件の事実がつかめた。そこで私は再度、現況を編集部に報告した。最初の時点から数カ月が過ぎ、週刊文春の編集長も交代し、担当デスクも新しくなった。 …
-
<第5回>事件は表沙汰にならずNHKの社内で“隠蔽”されていた
あれほど証言を拒絶していたNHK関係者のB氏が口にした「Iプロデューサーの8000万円着服という事実」。 だが、B氏のただならぬ緊張感は、事の重大さを如実に物語っていた。私を見据えるまなざし…
-
<第4回>「これが世間にバレるとNHKは潰れるかもしれない」
「実は、NHKのプロデューサーが巨額の不正をしているという話があるんです」 私は編集部に取材を提案した。するとデスクから、内容を詳細まできっちり詰めてくれ、と依頼された。また、毎週の記事と並行…
-
<第3回>体制寄りであるA氏の海老沢会長批判は意外に思えたが…
元来、私とA氏はフランクな関係だった。私自身、他社の社内人事や政治的話題を好んで記事にすることはなかったし、NHKの内情についても世間話として聞き流す程度だった。だが2月のその晩はいつもと違った。 …
-
<第2回>記者には守らなければならない“秘密”がある
NHK巨額横領事件の主犯I氏についての最初の情報が私のもとに入ってきたのは2004年2月のこと。私は旧知のA氏と会った。 「どうも、お元気そうですね」 そんな挨拶から始まる会合は、いつ…
-
<第1回>それは、なにげない会話から始まった
大河ドラマや朝ドラで絶好調、そして信頼できる報道機関として多くの国民から支持されている「みなさまのNHK」。しかしいまから10年ほど前、日本最大の巨大メディアに“未曽有の危機”があった――。 …