ドS刑事 二度あることは三度ある殺人事件
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<61>騒動はネットで動画配信に
「我々は必ず犯人を……あっ!」 目の前が真っ黒になり星が飛んだ。鼻に激痛が走る。誰かに殴られたと分かったとき、それが合図となったように群衆は暴徒化した。職員たちを殴りつけて庁舎内に次々と駆け込…
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<60>マヤの演説が群衆の怒りに火をつける
「えー、今回の事件についてですが、我々警察も捜査に全力を尽くしているところです」 マヤの声が庁舎前に広がった。それを聞きつけた人間がさらに寄ってきているようだ。 「結果を出せよ、結果を!…
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<59>群衆たちからどよめきと拍手
「我々は必死で捜査しています!落ち着いてください!」 代官山も必死になって群衆を留めながら声を張り上げた。他の警察官や職員たちも同じだ。 背後に立つマヤを見ると、彼女は怯えや怒りを露わ…
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<58>次の被害者は青と緑を含む名前
「マヤはどういう意味だと思う?」 「だから呼び捨て……」 代官山は、杏野に飛びかかろうとする浜田の襟を後ろに引っぱった。ここは大事なところだ。邪魔をさせるわけにはいかない。浜田が椅子から…
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<57>2つの数字が意味するものは色
科捜研が動画を検証したところ、二つの数字が一コマずつ表示されていたことが分かった。ネオチューブの視聴者たちからも多数の通報が入っている。巷では暗号解読や画像解析で盛り上がっているようだ。 ネ…
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<56>マヤも杏野も何かに気づいている
姉妹はともかく、メデューサは代官山も知っている。その姿を見た者を石に変える能力を持ち、頭髪は無数の毒蛇となっている。子供のころ、漫画で読んだことがある。その顔を描いた絵画作品も多数ある。いずれもおぞ…
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<55>暗号の内容はギリシア神話の一節から
杏野雲に憑依していたゾディアックが犯人に乗り移った、と彼女は確信しているようだ。 代官山はいまだに受け入れることができない。あまりにも荒唐無稽だ。 「なにが分かってないって言うのです」…
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<54>あなたはなんにも分かっていない
「黒井巡査部長!」 白金が乗り込むように姿を現わした。 「か、管理官」 渋谷が目を丸くした。マヤもポカンとした顔を向けている。白金はツカツカと足音を立ててマヤに近づいた。 …
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<53>次の被害者のヒントが映像に
「浜田さん、少し休んだ方がいいですよ」 「何言ってるんですか! 姫様を守るためだったら命なんか惜しくないです」 マヤに聞こえるように声を上げているようだが、彼女はまるで反応しない。浜田の…
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<52>暗号の難易度はトリプルA級
次の日。代官山たちはまたも東京拘置所の面会室にいた。仕切り窓を通して杏野雲が愉快そうにマヤを見つめている。 「あなたに解ける?」 マヤは今朝の朝刊を差し出した。一面にゾディアックからの…
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<51>いよいよ劇場型犯罪の真骨頂
夜になって警視庁本部で捜査会議が開かれた。 被害者は戸山由香梨。二十七歳の女性だ。動画は今までと同様、早回し処理されており、今回の再生時間は十五秒だった。 明らかに雛壇の幹部連中たち…
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<50>ターゲットはあと3人と予告
「今回の犠牲者はこちらの女性だ」 ゾディアックがファインダーの外に移動すると、椅子でぐったりしている若い女性が現れた。モニター越しにでも、すでに息をしていないことが分かる。白いシャツは鮮血で染…
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<49>ゾディアックはマヤの行動を監視
「獄中結婚だよ。君がパートナーになってくれれば前向きな気持ちで残りの人生を過ごすことができる」 「ちょ、ちょ、ちょっ……貴様、なにを言ってるんだ!」 ガラス窓に飛びかかろうとする浜田の背…
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<48>だったら僕にプロポーズしてくれ
「ヤツに入り込まれると人を殺すことに対する躊躇が鈍化する。ヤツに憑依された他の人間もそうだったんだろう」 「そんな馬鹿げた話、信じられるか」 「オランダの美術館に殺人現場を描いた作者不詳の…
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<47>父親が犯人だと知ったのは偶然
動機は櫛川直江の仇討ちだった。しかし「2444」が誰なのか長い年月にわたって特定できなかったので、ゾディアックに促されて疑わしい該当者を片っ端から殺害することにしたというわけだ。被害者は九人に及ぶと…
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<46>2444が示すイニシャルとは
被害者は杏野潤という定年間近の刑事だった。路上で倒れている状態で発見された。全身に刺傷が認められ、刃物で滅多刺しにされての失血死だった。 刑事である彼を恨む人間は多く、ヤクザやクスリの売人ら…
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<45>ゾディアックの言葉が心に響く
「それになんだ? お前は櫛川先生の仇討ちを諦めるのか」 犯人に対する復讐心の炎は消えてない。むしろさらに激しく燃えさかっている。 「絶対に許せない」 心の声のつもりが、つい言葉が…
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<44>無実の人を殺してしまった…
それからさらに一週間が経った。櫛川先生の事件の捜査は芳しくないようで、たまに帰宅してくる父親の顔にも疲労の色が浮かんでいた。そんな父親と久しぶりに夕食を共にした。 「父さん」 「なんだ」…
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<43>そうだ、お前がやったんだ
目の前が暗くなった。 それは一瞬のようにも数分のようにも感じた。 次に視界が開けたときには、西口の背中が目の前になかった。階段を降りたところに西口が倒れている。さらに激しさを増した雨…
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<42>絶対に先生の仇をとってやる
以前、父親から刑法三十九条のことを聞いたことがある。心神喪失者は無罪、心神耗弱であれば刑が減軽される。殺人を犯した者の多くは、それらを主張するという。 「捕まる前にやっちまえ」 ゾディ…