ドS刑事 二度あることは三度ある殺人事件
-
<21>再生回数はほんの数分で2万増
「これですね!」 今度は代官山も見逃さなかった。書棚のボックス状に仕切られたブースの一つに、前回と同じく土台付きの十字架のオブジェが置かれていた。 「背後には輪っかのマークよ」 …
-
<20>唇の震えはまだ生きている証拠
犯人からの挑戦など彼女にとってはどうでもいいことなのだ。彼女が求めるのはあくまでも殺人現場。犯人がどこの誰で、次に誰が殺されるかなんて興味がない。 マヤは楽しみに待っているのだ。 オ…
-
<19>犯人はヒントを小出しにするつもりか
それからも次々と刑事たちが報告を上げていった。オズさんがベートーヴェンの楽曲を流した意図はまだ不明だという。担当刑事たちはベートーヴェンの研究者にも話を聞きに赴いたようだが収穫はなかったようだ。 …
-
<18>オズさんは用意周到かつ計画的
次の日は早朝から捜査会議だった。隣に座るマヤは欠伸をしている。 「黒井さん、管理官が見てますよ」 代官山はマヤの腕に肘をぶつけた。 雛壇に着席する白金はマヤを睨みつけていた。 …
-
<17>担当者とはメールのやり取りだけ
グローバル広告社はビルから二百メートルほどしか離れていない、年季の入った雑居ビルの二階に入居していた。中に入ると部屋は狭く、ファイルや書類が乱雑にデスクの上に積まれていた。 中年の女性事務員…
-
<16>あの看板はまだかなり新しい
「浜田くん、あの会社調べてみて」 マヤは浜田に指示した。 浜田の方が上司なんだけど……。 しかし浜田は妙に嬉しそうな顔をすると、コートの大きめの内ポケットからタブレットを取なな…
-
<15>ツイートがすごい速さで流れていく
「黒井さん、あんまり挑発しないでくださいよ」 代官山は小声で諫めた。 「大丈夫よ。今回は私がキーパーソンなんだから。私が協力しなかったら困るのはあちらの方よ」 代官山はため息をつ…
-
<14>本件は明らかに劇場型犯罪
マヤはあんな性格だから彼女のことを憎んでいる人間も少なくないだろう。しかしいくら彼女への当てつけだとしても、殺人なんて大それたことをするとは思えない。しかしマヤの人間離れした洞察力は警視庁内でも有名…
-
<13>これから殺戮ゲームを開始します
渋谷が合図すると、雛壇の横に設置されたスクリーンにプロジェクターの動画が投写された。現場には被害者である女性が座っている。ブラウスを血で染めているが、かすかに頭が揺れている。どうやらまだ生きているよ…
-
<12>犯行現場の動画がネットにアップされた
「この曲に意味があるのかな」 駒田が首を捻っている。 「わざわざ音楽をリピートさせているくらいだから意味があるんでしょうね」 このベートーヴェンの楽曲にその意味が隠されているのだ…
-
<11>マヤにとって殺人事件は宝物庫同然
彼女は筋金入りの殺人現場マニアだ。そんな彼女にとって現場は宝物庫同然だ。血液の付着した凶器、切断された指や肉片、被害者の指輪やイヤリングなどのアイテムは、何にも代えがたい価値あるアイテムなのである。…
-
<10>犯人は絶対にダリオを意識してるわ
そして浜田は……見当たらない。つい先ほどまで一緒についてきたはずだ。刑事のくせに死体が苦手な彼は、どこかに隠れているのだろう。とはいえその方が賢明だろう。不注意で重要な証拠を踏んづけたり、嘔吐して現…
-
<9>殺しだ、すぐ戻ってこい!
画面を見ると渋谷係長と表示されている。代官山は受信アイコンをタップすると本体を耳に当てた。 「殺しだ! すぐに戻ってこい!」 渋谷の怒号が痛いほどに鼓膜に響いた。 * 「い…
-
<8>あなた、ゾディアックを知らないの?
それは殺人現場を見たいから。そう、彼女の関心は殺人現場にある。犯罪者に対する怒りや憎しみではない。罪も憎まないし、人も憎まない。あくまで彼女が求めるのは殺人現場。それも芸術的に洗練された殺人現場であ…
-
<7>マヤが刑事になった理由は…
だから浜田もいつものようにバーバリーのコートを羽織っていた。子供のように小柄の体型にはブカブカで、宗教画で描かれる天使のような童顔にまるでなじんでいない。刑事ごっこに興じる中学生のようだ。先日もヤク…
-
<6>あの娘はどす黒い闇で満たされている
それになんといっても新垣美優がアイドルになったのは、闘病中の母親を支えるためだ。彼女の家庭はシングルマザーで経済的に苦しかったらしい。母親の入院費を工面するために芸能界入りしたとインタビューで涙なが…
-
<5>ふぅん、あんなのがいいんだ
「ちくしょう!」 ソウタは玄関に向かおうとしたが、腰に激痛が走って床に倒れた。息が止まるような痛みだ。気力ではどうにもならなかった。 なんとか立ち上がって窓の外を見た。女がエントランス…
-
<4>女が華子の背後に忍び寄っていく
それから半年が経ったがソウタの元に刑事が訪ねてくることはなかった。新聞やネットニュースをチェックしても、飯塚肇の事件の進捗についての記事は見当たらなかった。ソウタの中の怯えは、オセロゲームの駒のよう…
-
<3>俺は華子のガーディアンになる
華子はゆっくりと立ち上がると窓に向いた。髪の毛は跳ね上がり、頬にはアザができていた。涙で顔がグシャグシャになっている。 そんな彼女を見て胸が痛くなった。今までカーテンに遮られて窺い知れなかっ…
-
<2>双眼鏡の向こうに華子の恋人が
ソウタの部屋は三階の角部屋だ。外通路に洗濯機を設置している。玄関扉を開いて入るとすぐに小さなキッチンのついた短い通路が伸びていて、ユニットバスルームがキッチンと対面している。通路の先が畳敷きの四畳半…