ドS刑事 二度あることは三度ある殺人事件
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<41>殺人の動機は地上のもつれか
しかし西口も作家志望者であるなら、櫛川先生とは大いに話が合うはずだ。創作を通してなんらかの交流があったとしても不思議ではない。 さらに櫛川先生は男子たちにも人気が高い美形の教師だ。独身である…
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<40>司書の西口はイニシャルも完全一致
「学校関係者かな」 「その可能性はある」 杏野が指を鳴らしてひとりごちるとゾディアックが答えた。 「調べてみよう」 杏野はすぐに学校の図書館に駆け込んだ。放課後だが数人の生…
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<39> 頭の中の声は本物のゾディアック
「本人に会ったことあるの」 「何世紀にもわたっていろんなヤツを見てきた。チンギス・ハンやモーツァルトは知っているだろう」 杏野は頷いた。両者とも伝記で読んだことがある。昔から、本は人一倍…
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<38>恐怖よりも好奇心が大いに勝る
「父さん……」 杏野は姿勢を正して父に向いた。 「なんだ」 「犯人は捕まるかな」 「心配するな。父さんたちが必ず捕まえてやる。日本の警察は優秀だ」 父親は杏野に握り拳…
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<37>数字は犯人につながる重大なヒント
「バカだな……なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう」 「ほぉ、気づいたのか」 またもゾディアックの声がした……声ではないが。 「先生のイニシャルだ。櫛川直江。櫛川の櫛が9…
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<36>最近、四桁の数字にふれたばかり
「だ、誰?」 杏野は慌てて瞼を拭うと周囲を見回した。しかし人の気配はまるでない。 「驚くのは無理もない。俺はお前の中にいる」 また声がした。耳からというより頭の中で響いているよう…
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<35>沈殿する闇の中にまさか光景
清掃用具を入れるロッカーを開けたら案の定、杏野のノートが放り込まれていた。取り出すと表紙が汚れている。 「健太の野郎!」 時計を見るとここに来てから、二十分が経過していた。もう九時を回…
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<34>先生は用事があるとは言っていたが…
「教室に忘れ物をしたんだ。宿題のノートだからまずいんだよ」 「立花先生怖いもんね」 櫛川はクスッと笑った。 「先生こそなにしてんだよ」 「今日は当直よ。本当は大沢先生だったん…
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<33>夜の校舎に聞き覚えのある女性の声
「デビューした時のためにここで練習しておけば」 杏野はランドセルからノートを取り出して白紙のページを開いた。 「しょうがないわねえ」 櫛川はまんざらでもなさそうに白衣の胸ポケット…
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<32>杏野少年は櫛川先生に恋心
杏野はよく風邪を引いたり熱を出すので保健室の常連になっていた。正直言えば我慢できる程度の症状でも保健室に足繁く通っていた。櫛川に会うのが目的だ。 「今日は早退する? 担任の先生には言っておいて…
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<31>なるほど、アナグラムだったのか
「ヒントは小津酸株式会社よ」 マヤの目つきが挑戦的になった。 「小津酸……オズさん……オズ、さん」 杏野は天井を見上げながら思考を巡らせている。しばらく彼のぽつりぽつりとした独り…
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<30>これがゾディアックのシンボルマーク
「犯罪研究の第一人者どころか、犯罪者そのものじゃないですか」 浜田は悔しそうに目元を拭った。 「さすがは第一人者だけあって、いろいろと勉強させてもらったわ。捜査に当たっては、彼の意見がな…
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<29>杏野雲はイケメンシリアルキラー
代官山は記憶を探ったがどこかに引っかかったまま出てこない。 「久しぶりだね、マヤ」 男性はマヤを見つめるとにっこりと微笑んだ。これだけで多くの女性は心を持って行かれそうだ。 「呼…
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<28>拘置所にマヤの元カレが収容か
代官山もここに足を運ぶのは三度目だ。 東京都葛飾区小菅一丁目三十五番一号。割り当てられた固有の郵便番号は一二四―八五六五。 地上十二階、地下二階の建物は、まるで要塞を思わせる威圧感に…
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<27>楽曲、点字本、芥川の共通点は?
芥川といえば日本を代表する文豪だ。『羅生門』くらいは知っている。 「おそらくこれが今回の大きなヒントね」 マヤが白手袋をした手でそのうちの一枚を拾い上げた。写真の裏に書き込みなどは認め…
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<26>死体の上に芥川龍之介の写真
「パパが社会的に抹殺するって言ってたわ。気の毒ねぇ」 彼女はコメントを眺めながら冷笑を浮かべていた。 書き込み主は近日中に学生なら退学処分を食らうだろうし、社会人であればクビを余儀なく…
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<25>床に見慣れた十字架のオブジェ
現場に到着した代官山は、犯行動画を回想する。 今回も犯人は黒革の手袋だけしか姿を見せていない。カメラが部屋の様子を映し出す。午後三時とあって室内は明るい。窓にはカーテンが掛けられていないから…
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<24>ネット住民だちの操作能力は優秀
「あと、十字架のオブジェですよ。前回と一緒だからあれはきっと犯人が用意したものですよね」 前回と今回、それぞれ十字架も土台もまったく異なるものが使われている。どうやら犯人の自作らしいという科捜…
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<23>被害者の自宅に十冊の点字本
代官山たちは桜田門の警視庁本部、六階の会議室にいた。先ほど、夜の捜査会議が終わったところだ。 今朝の捜査会議のあとにネオチューブに第二の殺人動画がアップされていると通報が殺到した。動画は前日…
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<22>マヤが残忍な事件を引き寄せる
「係長、ネオチューブ観てください。第二の被害者が出ましたよ」 「ああ、分かってる」 渋谷はソワソワした目つきで周囲を見回した。「お姫さんはなんて言ってる?」 やっぱりそういうこと…