「dele ディーリー」本多孝好氏
本作では、詐欺絡みのリスト、違法に手にしたと思われる個人情報、秘密の預金に関するものなど全5話が描かれる。そうした不気味なデータをめぐる不可解な事件と人間模様が交錯するなか、祐太郎らの行動によって依頼人の切ない思いが浮かび上がってくる。
「記憶にとどめたくて記録するもの、何げなく記録したものとさまざまありますが、これから先、膨大な記録に囲まれて暮らすことになる我々は、記録との付き合い方を、もう一度考えてみる時期にきているのかもしれません。今60代の人などは恐らく、膨大なデータを残して死ぬことになるでしょうが、それをどうするのか。削除する、しないを遺族は選び得るのか。その覚悟は、残すほうも残されるほうも必要になってくると思いますね」
今後、シリーズ化していくという。注目だ。(KADOKAWA 1600円+税)
▽ほんだ・たかよし 1971年、東京都生まれ。94年「眠りの海」で第16回小説推理新人賞を受賞。99年、同作を含む短編集「MISSING」が大ヒット。著書に映画化された「真夜中の五分前」「ストレイヤーズ・クロニクル」ほか、「MOMENT」「WILL」など多数。