「山手線の名建築さんぽ」和田菜穂子著

公開日: 更新日:

 東京の山手線は、新駅「高輪ゲートウェイ駅」(2024年本開業予定)を含め、全30駅を約1時間で1周する。

 多くの人にお馴染みとはいえ、普段利用する駅は限られ、気の向くまま途中下車をする人は少ないのではなかろうか。本書は、身近でありながら実はよく知らない山手線沿線の街々を、名建築に注目して歩く散歩ガイド。

 スタートの「始発駅」品川駅の高輪口を出ると出迎えてくれる「グランドプリンスホテル新高輪」(1982年竣工)は、日生劇場などを手掛けた建築家・村野藤吾氏の最晩年の作品。

 改修工事でロビーの内装は大きく変わっているが、日生劇場と同じく天井全体にアコヤ貝が貼られた日本一豪華な宴会場「飛天」や「メインバー あさま」、日本庭園にある「茶寮 恵庵」などは竣工当時のオリジナルデザインが残されている。

 以降、目黒駅ではアントニン・レーモンド設計によるコンクリート折板構造の教会「東京大司教カトリック目黒教会」(1955年)や回遊式庭園を持つ和風邸宅「旧朝倉家住宅」(1919年)、新宿駅では新宿御苑内にある昭和天皇のご成婚記念として台湾在住邦人から献上された中国風の建物「旧御凉亭(別名台湾閣)」(1927年)など。

 山手線を「外回り」に回りながら、各駅最寄りの70余物件を写真とエピソードとともに紹介。

 紹介される多くは、有名建築家の作品や、レトロ建物、その街のランドマーク的な建物だが、中には、もともとは「萩荘」(1995年)という木造アパートだったが、最小文化複合施設「HAGISO」に生まれ変わり、下町の情報発信拠点となっている西日暮里駅のユニークな物件などもある。

 知っているようで知らない東京のもうひとつの顔に出合えるお薦め本。

(エクスナレッジ 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    フジテレビ「第三者委員会報告」に中居正広氏は戦々恐々か…相手女性との“同意の有無”は?

  3. 3

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  4. 4

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  5. 5

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  1. 6

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 7

    冬ドラマを彩った女優たち…広瀬すず「別格の美しさ」、吉岡里帆「ほほ笑みの女優」、小芝風花「ジャポニズム女優」

  3. 8

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 9

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」