「日本人の仏教史」五来重著
「日本人の仏教史」五来重著
従来、日本の仏教の歴史は学問や思想の歴史として、さらに寺院や各仏教教団の社会的・経済的側面から主に語られてきた。本書では、そんな仏教史を、庶民信仰としての仏教という視点から解説したテキスト。
インドで成立した仏教が日本に流伝した時期は、諸説ある中で538年説が有力。
しかし、著者は朝鮮半島との文化的往来は3世紀から頻繁に行われており、公式の伝来「公伝」ではなく、民間ベースでの「密伝」があったと説く。なぜなら、多くの修験道の山や庶民信仰の寺院縁起に仏教公伝以前の開創や開山を主張するものが多いからだ。
以降、日本仏教の祖師である聖徳太子をはじめ、各宗派の宗祖から高野聖や山伏などの民間僧まで取り上げ、庶民信仰としての仏教の歴史をたどる。
(KADOKAWA 1584円)