勸玄効果で満員 クールな海老蔵で見せる太閤記&源氏物語
7月の歌舞伎座は昼夜とも海老蔵が主演の新作。昼は太閤記、夜は源氏物語という、おなじみの物語で、どちらにも息子・堀越勸玄も出るので大入り満員である。
昼の部は「三國無雙瓢箪久」。「太閤記」もので、本能寺の変から、信長の四十九日の法要までの約50日間の出来事を古典的な歌舞伎の様式で描く新作。基本的には史実にのっとった物語だが、「歌舞伎は荒唐無稽で何が悪い」といわんばかりの、とんでもない人間関係が創作されてもいる。
信長のイメージが強い海老蔵は、「人のいい秀吉」を、距離を置いて、感情を込めずに演じている感じ。
堀越勸玄は長時間じっとしていなければならず、物語を一変させる決めゼリフもあり、昨年よりも難役。
悪役の光秀は中村獅童。いきなり本能寺から始まり、謀反にいたる心理の過程は描かれず、何を考えているのか分からない。こういう場合は「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーのように「悪いから、悪い」人物として割り切って演じたほうがいいと思うのだが、そこまでに達していない。