涙と笑いの新春対談 野田義治×村西とおるの意外な親交秘話
我らが巨乳マイスター野田義治(73)が会議室のドアを開けた。リアル全裸監督・村西とおる(71)が陽気な声で出迎えハグをした。数十年ぶりの再会だった。野田義治人生最大の窮地を救ってくれたのが村西とおるなら、村西監督の窮地を救ったのが野田義治だった。2人の秘話が紙面で初めて当人たちの口から語られる、新春スクープ対談!
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野田 ほんと何年ぶりなんだろう? とっつぁん(野田社長は村西とおるをいつもこう呼んでいた)の顔、久しぶりに間近で見ながら話したいよ(笑い)。
村西 元気だねえ(笑い)。日刊ゲンダイの「新巨乳バカ一代」も大評判で、私も毎日読んでるんだけどさ、映画化したいって話、随分聞いてるよ。
野田 勘弁してよ。そんなこと言わないでよ(苦笑い)。
村西 オレとか野田社長みたいなやつはもう二度と日本に生まれてこないから。こういう不屈の日々を経てきた男とその物語ってのは、郷愁の物語だから絶対に日本人にウケるのよ。
野田 うれしいね。昔に戻ってるね、しゃべり方が(笑い)。
巨乳マイスター野田義治の目が涙でにじんでいる。
村西 もう毎日(野田社長と)会ってこうしてしゃべって、仕事したっていう日々が随分続いたんだから。でもね、村西とおるが今日あるのは野田義治のおかげなの。
野田 「全裸監督」読んだけど、あまりにもドラマチックだよ、それは。
村西 いや。オレの置かれた状況がドラマチックだから、あんなことが起きたんだよ。あんたは絶好調でさ、“巨乳の野田”って言われて売れまくってる時期だよ。オレはどん底だよ。
芸能界でオレの名前を出してもマイナスなのに(村西)
ダイヤモンド映像グループを率いていた村西とおるは、バブル期に栄耀栄華極めるも衛星放送事業につまずき、放漫経営で行き詰まり、50億円の借金を背負い倒産、無一文になる。アンダーグラウンドの世界から多額のカネを借りていたために、過酷な取り立てで心身ともに限界に達し、資金繰りのさなか、六本木通りを車で走行中に自爆死を覚悟。猛烈な速度で西麻布交差点にさしかかった。
村西 そのときに渋谷の手前の交差点でさ、上に高速道路が走ってる。急ブレーキで路肩に止めて、肩で息してた。雨でワイパーが動いてる音を聞きながら、ああ死ねなかった、カネなくこれからどうしようかってときに、カーラジオからあなたの声が聞こえてきたんだから。“今日あるのは村西とおる監督のおかげなんだよ”って。オレはそのとき倒産してさ、世捨て人状態で、黒木香を自殺に追い込んだ男みたいなイメージ持たれていたから、村西とおるの名前を野田社長が世間に発表したって、プラスになること何一つないのよ。でも、平気で言ってくれたから、ああ、男気のあるやつだなって、よーし! もう一度やってみようかってなったんだよ。
野田 男気なんて言われてもさ、だってオレがその前に世話になったんだから。とっつぁんに。
村西 まあまあ。それからしばらくして、忘れもしないよ、テレビ東京の番組にまたこの男が出てて、また“今日(自分が)あるのはね、村西とおるのおかげなんだ”って言ってるの。芸能界でオレの名前なんか出したってマイナスにしかならないのに。それなのに……。自分自身が逆境でつらい思いしてるときに、気遣いしてくれたことって決して忘れないんだよ。
あのままAVやってりゃよかったんだよね(野田)
野田 それはお互いさま。オレだって(堀江)しのぶが闘病していたとき、カネがなくなってとっつぁんに、“仕事させてくれ。カネが必要なんだ”って言ったら、何にも聞かずにコンビニの袋に300万円詰めて渡してくれた。毎月毎月。芸能人のイメージビデオのプロデュース料だって言って。ラジオやテレビで、“感謝してる”って発言したのもそんなの当たり前の話だよ。
村西 あの2発、ラジオとテレビ。本人は忘れてるよ。そんなこと言ってないよって言うだろうけど(笑い)、言ってるんだよ。
野田 だってあの頃はとっつぁんと裏表でぴったりいたんだから。オレは、日刊ゲンダイの連載で(あの頃の話)書くなーって言ったんだけど(笑い)。
村西 野田社長は、脱がないセクシーエンターテインメントの世界をつくり上げたんだから。
野田 とっつぁんはロケット(衛星放送の意)打ち上げようとして失敗しちゃったけど、あのままAVだけやってたらよかったんだよ。でもうちらの業界の連中がさ、これ(新巨乳バカ一代)を読んで、もう面白がってるよ。
村西 まさか野田社長とオレがこんなに懇意にしてるって、世間の人は知らないだろうから。
野田 そうそう。だってね、とっつぁんの女房になる(ダイヤモンド映像専属女優)乃木真梨子にちょっかい出そうとして怒られたんだから(笑い)。
村西 ワハハハ! ナイスだね! でも何よりだよ元気で。
四半世紀のブランクをものともせず、再会を果たすと、瞬時に往事のノリを復活させた。2020年。一体このふたりはどこへ向かおうとするのだろうか――。
(構成=本橋信宏)
▽野田義治(のだ・よしはる)
1946年、富山県生まれ。渡辺プロ系列のプロダクションで夏木マリ、いしだあゆみらのマネジャーを担当。80年にイエローキャブ設立。故・堀江しのぶ、かとうれいこ、細川ふみえ、山田まりや、佐藤江梨子、小池栄子、MEGUMIらを発掘し「巨乳軍団」の名物社長として知られる。2004年に同社社長を辞任。現在はサンズエンタテインメント会長。
▽村西とおる(むらにし・とおる)
1948年、福島県生まれ。裏本販売を経て、AV監督となり「AV界の帝王」へ。2019年は、自身がモデルとなっている「全裸監督」(Netflixオリジナルドラマ)が大ヒットとなり、注目が集まった。ドキュメント映画「M 村西とおる狂熱の日々完全版」も公開された。前科7犯、借金50億の激烈な半生を歩む。
▽本橋信宏(もとはし・のぶひろ)
1956年、埼玉県所沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。私小説的手法による庶民史をライフワークとしている。バブル焼け跡派と自称。執筆はノンフィクション・小説・エッセー・評論まで幅広い。最新刊は、「東京裏23区」(大洋図書)。「全裸監督 村西とおる伝」(太田出版)が山田孝之主演でNetflixから世界190カ国同時配信中。