人生に2度死んだ男<1>「なんだ円楽じゃないんだ」の声…
実はこの時、俺の体に何が起きていたのか? これは後日、担当医より説明されたのですが、浴室で転倒した時に肋骨が折れ、肺に突き刺さったらしいのです。しかし、あまりに見事に刺さったために肺の空気は漏れなかったらしいのですが、その後の着替えにより肋骨が肺から抜け、一気に肺がしぼんでいったということです。
ちなみに、急激に肺が縮むと心臓を押さえつけて死に至るケースも少なくないと聞かされ、ゾッとしたのでした。正直、薄れゆく意識の中で119番した記憶さえないのですが、救急車に乗せられる寸前の群衆と、「円楽師匠じゃないんだ?」、揚げ句には「なんだ、ダンカンかよー!!」の声は不思議に耳に残っていました。
では、なぜ、円楽師匠じゃないんだ? の声が飛び交ったかというと、なんと先代の三遊亭円楽師匠と俺の家は道をはさんで20歩の距離だったのです。だから、師匠がお元気な時は俺と子供で「ピンポ~ン! チャラ~ン、越後生まれのこん平で~す!!」とピンポンダッシュをしたものです。懐かしいなあ~(って、大の大人がそーいうことするんじゃねーよ!!)。
それが「死ぬかと思った」の2回目で、1度目は35歳の頃、急性膵炎(すいえん)で1カ月以上の入院、なんと3週間は点滴のみ……。こちらは肋骨より重症な死ぬかも……だったのです。それは次回に。
(つづく)