赤塚不二夫編<3>愛猫・菊千代死去 人間と同じ葬儀で見送り
出会った頃はすでに高齢だった菊千代。歩き方はのっそりだったが、特に体調は問題なかった。それでも寿命はくる。私は仕事で沖縄に出張中だった。早朝、真知子夫人が「菊ちゃんが死んじゃった」と伝えてきた。夫人によれば、前夜、いつものように仲間と居間で飲んでいた。午前0時を回った頃、奥の部屋から出てきた菊千代。
水でも飲むのかと思いきや、テーブルの前で倒れそのまま息を引き取った。
「多分、別れを告げに来たんだと思う」(夫人談)
1997年10月、菊千代は19歳で天国に旅立った。赤塚家は人間と変わらぬ葬儀で送ることになり、私は葬儀委員のひとりだった。亡くなった夜は内輪の通夜。翌日、ペットも扱うお寺で葬儀を行った。当日、あることに気が付いた。猫の葬儀に出るのは誰もが初めてのはず。人間なら喪服だが、猫の場合どうするのか。私は委員の立場から黒服だったが、50人を超す参列者はさまざま。喪服もいれば、ジーンズにセーターという普段着もいた。「香典」も出す人、出さない人もいたが、菊千代に対する思いは変わらなかった。