著者のコラム一覧
原田曜平マーケティングアナリスト・信州大学特任教授

1977年、東京都生まれ。マーケティングアナリスト。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。2003年度JAAA広告賞・新人部門賞受賞。「マイルドヤンキー」「さとり世代」「女子力男子」など若者消費を象徴するキーワードを広めた若者研究の第一人者。「若者わからん!」「Z世代」など著書多数。20年12月から信州大特任教授。

明和電機に訊く(前編)発明に必要な性格はなんですか?

公開日: 更新日:

 青い作業服を着用した中小企業のスタイルでさまざまなナンセンスマシンを開発する「明和電機」。土佐信道さん(56)プロデュースの芸術ユニットで、海外でも活躍。来年の2024年で活動30周年を迎える明和電機に発明のヒントを訊く!

  ◇  ◇  ◇

原田曜平(以下=原田) 明和電機さんといえばユニークな発明とパフォーマンスでお馴染みです。

明和電機(以下=明和) 僕はソニーミュージック主催のアートのコンペでグランプリを取り、1994年にソニーミュージックのアーティストとしてデビューしました。ソニーさんがミュージシャンではなく、物を創り出すアーティストを売り出す実験的なプロジェクトだったのですが、その部署がなくなってしまったときに、ソニーさんが「明和電機をなくすには惜しい」と言ってくれまして。で、いろいろ探してくれた中に吉本興業があり98年に移籍。2016年までいました。

原田 もともとアーティスト志望ですか?

明和 最初は絵描き志望でした。芸術の道に進もうと思っていて、入学した筑波大学では今で言うメディアアート、当時はハイテクノロジーアートという「総合造形」という学科に進学しました。アートとエンターテインメントを融合したような学科で、卒業生にはゲームクリエーターで㈱ポケモン代表取締役社長の石原恒和さんや、絵本作家として活躍しているヨシタケシンスケさんがいます。

原田 大学時代にアートを作り始めたんですね。

明和 そうです。ただ、自分が作品を作って、それを世の中に出すときに、はたと困ったんです。普通のアートとは違うので、見せ方をどうしようか考えたときに、電機屋に扮したスタイルで変な機械を見せる“明和電機”を思いついたんです。

原田 なるほど。でもアーティストとしても一風変わっていますよね。

明和 普通アートというのは1つの作品しか作りませんよね。その唯一の作品を売るから値段が高くなり、ニッチなアートマーケットで出世していく。これがどうも僕の肌に合わなかった。僕は高校時代にバンドをやっていて、ミュージシャンはのっけから「100万枚売るぞ!」「武道館行くぞ!」などマスに対してアプローチしていきます。そこが根本にあったので、自分で作ったアートを1つだけ売ること自体まずピンときませんでした。

原田 普通はギャラリーに置いて、買ってもらってという流れですからね。

■「アートをマスプロに」

明和 アートの王道に逆らって、アートのマスプロ化を明和電機でやろうと思いついたときに、プレゼンでグランプリを取ってソニーミュージックに所属させてもらえたんです。ソニーミュージックといえば音楽業界でのマスプロのプロフェッショナルですから。そこで最初に作ったのが、魚の骨の形をした電源用延長コードの「魚コード」です。

原田 吉本さんはどういう評価でしたか。

明和 移籍する前から「ナンセンス★マシーン」というクスッと笑える動作をするかわいい見た目の機械を作っていたのですが、それを見た大崎(洋・前会長)さんが「お笑いは消えてしまう。ギャグにもネタにも著作権はない。でも、明和はお笑いが形になっていて日本だけじゃなく世界にも売れる」と言ってくださり、所属できました。当時はテイ・トウワさんがいたり、ダウンタウンさんがCDを出したり、今田耕司さんがKOJI1200としてデビューしたりなど、いろいろ新しい試みをやっていたので、タイミングもよかったんだと思います。

原田 いきなりテレビで明和電機さんを見た人からすると、吉本所属だし、最初から物を使ったお笑い芸人さんなのかなと勘違いした人もいるでしょうね。

明和 いまだにそう思っている人もいると思います(笑)。特に「タモリの音楽は世界だ」という番組で、「世界手作り楽器協会」というコーナーに出演させていただき、日本中の変な楽器を作っている人を紹介していたのでアートとエンターテインメントの変な人という印象は最初からあったと思います。

原田 ヒット作の「オタマトーン」は東急ハンズなどいろいろなところで見ますよね。トータルで200万個以上売れたそうですが、どんな経緯で開発を?

明和 楽器をアートとしていろいろなパターンの物を作っていたのですが、最終的に「声」が面白いなと。まず、声帯は筋肉でできているし不安定。脳で一生懸命、情報整理をして、筋肉と歯と口で音を出すなんてすごいですよね。「声」で楽器を作りたいと思ったときに、仕組みをいろいろ研究して、最終的に喉をゴムで作って、空気を送って人工声帯で音を出すロボットを作りました。口を開けたり閉めたりする動作で音を変えるのはビジュアル的にも面白いと思ったのが「オタマトーン」のきっかけですね。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  4. 4

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  5. 5

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  1. 6

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  2. 7

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  3. 8

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明

  4. 9

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘

  5. 10

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」

  2. 2

    円安地獄で青天井の物価高…もう怪しくなってきた高市経済政策の薄っぺら

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  5. 5

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  1. 6

    佐々木朗希がドジャース狙うCY賞左腕スクーバルの「交換要員」になる可能性…1年で見切りつけられそうな裏側

  2. 7

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ

  3. 8

    “第二のガーシー”高岡蒼佑が次に矛先を向けかねない “宮崎あおいじゃない”女優の顔ぶれ

  4. 9

    二階俊博氏は引退、公明党も連立離脱…日中緊張でも高市政権に“パイプ役”不在の危うさ

  5. 10

    菊池風磨率いるtimeleszにはすでに亀裂か…“容姿イジリ”が早速炎上でファンに弁明