自民裏金事件を政治資金研究の第一人者が斬る「改革には透明性と外部監査が必須です」
岩井奉信(政治学者)
昨年末に自民党派閥のパーティー収入の裏金化が発覚してから、4カ月が経過した。複数の国会議員と会計責任者が立件され、今なお政界を揺るがしている。安倍派や二階派の衆院議員が政治倫理審査会で弁明したが、実態解明からは程遠い。裏金議員を根絶するにはどんな規制が必要なのか。政治資金研究の第一人者に聞いた。
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──億単位の裏金が発覚した今回の事件をどうご覧になっていますか。
私が知る限りで過去最悪の事件です。1988年に発覚したリクルート事件と比較されることが多いですが、あの当時は法制度に不備があった。ところが、今回の場合はそもそも違法行為ですからね。大勢の議員が長年にわたって組織的に不法行為を行っていたわけですから、ちょっと考えられないです。最近の「政治とカネ」は個人の問題として捉えられ、議員が辞任して終わりとなるケースが多い。しかし、今回は個人のモラルの問題ではありません。
──特に安倍派は裏金額が大きかった。
「自民1強」「安倍1強」時代が長く続いたことで、捜査機関はどうせ手が出せない、と安倍派の議員たちは甘く見ていたのかもしれません。不正が平気でまかり通ると思っていたのではないか。
──1強の弊害ですね。
問題が明るみに出る前から、不自然さは感じていました。安倍派の政治資金収支報告書を見ると、パーティーの規模に比べて収入が異様に少ない。参加者数が麻生派のパーティーの倍なのに収入が半分程度で、明らかにおかしい。これは自民党内でも噂になっていました。検察も2年ほど前から目をつけていたといわれている。2022年の安倍派パーティーの直前に、安倍元首相が「不透明なことはやめよう」と指示したのも、党内の噂や検察の動きを察知したからではないかとみています。
──リクルート事件後、自民党は政治資金の透明化などを含む「政治改革大綱」をまとめたのに、また「政治とカネ」の問題が起きてしまった。
私も民間政治臨調の一員として、政治改革に関わりましたが、不十分な点はあったかもしれません。例えば、政治資金をチェックする第三者委員会をつくるよう求めましたが、受け入れられなかった。現金授受の禁止については、一顧だにされませんでした。ただ、企業団体献金の規制強化、政治資金の公開基準の厳格化などは達成できた。大綱が掲げる理念を順守すれば、今回のような問題は起きなかったはずですが……。
■現行制度は“抜け道”“トンネル”だらけ
──改革の理念が議員らに守られなかったと。
政治改革で政治資金規正法が改正された後、“抜け道”をあちらこちらにつくられてしまったわけです。例えば、企業団体献金は「政党」だけに集約するとしたのですが、後々に議員本人が代表を務める「政党支部」にも道が開かれました。また、政治家の資金面における公私峻別の徹底が求められ、政治家個人への寄付が禁じられたにもかかわらず、政党から政治家個人にカネを渡してもOKということにされてしまった。これが、政党から党幹部に渡され、使途の公開義務がない「政策活動費」の背景にあります。“抜け道”どころか“トンネル”です。