やり投げ金メダル北口榛花 日大時代の監督に聞いた「寝転がってカステラをパクリ」に見た強さ

公開日: 更新日:

「私たちが信じられないようなアプローチで優秀なコーチを見つけ、結果を残した」

 ──これまでの日本選手にはいないタイプですね。

「そうですね。国内に専門のコーチがいないことに不安を抱き、フィンランドのやり投げ講習会で出会ったセケラックコーチに指導を直談判し、単身チェコに向かった。英語圏ならまだわかりますが、当時の北口はチェコ語がまったく話せない。それでもチェコに一人でやってきて、セケラックコーチは『まさか本当に来るとは』と、驚いたそうです。その後はやり投げのトレーニングだけでなく、習得が難しいチェコ語も勉強し、今では現地のインタビューにスラスラ答える。そんな過程を知っているからチェコの人々も北口の金メダルを喜んでくれたのです。それにしてもチェコに行ったときは私もビックリしました」

 ──多くの選手はよく「メダルを目指したい」と言いますが、そのために何が必要なのか考え、行動に移す点が欠けています。北口選手は違いました。


「私の教え子(千葉・成田高時代)だった室伏広治(アテネ五輪ハンマー投げ金)は当初、父親の重信さん(アジア大会5連覇、日本選手権10連覇)に指導を受けていましたが、米国のコーチに師事してから一人で海外を転戦するようになった。北口に『世界を知っている室伏に会って、いろいろ聞いてみたらどうだ』と助言したことはあります。北口は自分で考え、私たちが信じられないようなアプローチで優秀なコーチを見つけ、結果を残した。わずか4年前、日本の女子選手が五輪のやり投げで金メダルを取ると誰が予想できたでしょうか。セケラックコーチとの相性も良かったように思います」

 ──どんな点ですか。

「例えば、筋力がある選手が多いドイツでは、やりを正面に向けて助走し、投げるリニア型が主流です。チェコはねじった体を戻して投げるローテーション型が多い。北口はこのローテーション型で投げているのですが、まっすぐな助走からクロスに入り体のひねりが始まり、やり先が右へと向いていく。その後、投げの構えで体の柔軟性と肩の柔らかさで体を反らしやりを後方に残す。そのため、やりの角度は高くなり、またやりに力を加える時間が長くなる。だから多くの選手が苦手とする追い風に強い。体が柔軟で体幹がしっかりしている北口にはこのローテーション型が合っていたのです」

■日本人の殻を破る

 ──これで2015年世界ユース、23年世界選手権、パリ五輪の3冠です。

「世界ユースに勝っていますが、北口が19年に、未知のチェコへ単身留学したのは、そこまでやらなければ世界選手権や五輪で勝負できないと思ったからでしょう。自分への賭けでもあったと思う。そこまで考え抜いても、なかなか行動に移せるものではありません。そんなスケールの大きな選手ですからね。競技中にうつぶせになってカステラを食べることなんて、これっぽっちも気にしませんよ(笑)」

 ──北口の金メダルで個人競技の選手は海外に出ていくケースが増えるのではないですか。

「そう思います。北口のように、自分の殻、日本人の殻を破ってほしいですね」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • その他のアクセスランキング

  1. 1

    「羽生結弦は僕のアイドル」…フィギュア鍵山優真の難敵・カザフの新星の意外な素顔

  2. 2

    日本のアスリートと「向学心」に雲泥の差…《エリート選手に勉強不要》は世界の常識からズレている

  3. 3

    私は何度でも嫌われ役を演じる覚悟です。エキスポ駅伝の開催前に「吠えた」理由を話します

  4. 4

    羽生結弦「30歳の挑戦」…プロ転向から2年半「毎回五輪での記録を更新する気持ちでやっています」【独占インタビュー】

  5. 5

    男子フィギュア「表現力とスケーティング」の鍵山優真が「4回転の神」マリニンを凌駕する条件

  1. 6

    貴ノ浪が43歳で急逝 横綱・大関は「寿命が短い」本当の理由

  2. 7

    宇野昌磨にはハイレベルすぎる「羽生結弦のモデルケース」…アイスショープロデュースを発表も

  3. 8

    世界陸上が終わってからが正念場…国立競技場は民営化で「稼げるスタジアム」に変貌できるのか

  4. 9

    JOC山下泰裕会長の療養離脱からはや1年…三屋裕子代行でも“無問題の大問題”

  5. 10

    【箱根駅伝】国学院大「初優勝で3冠」なるか…阻むのは経験値高い青学大か、それとも駒大か? 元早大監督が読む

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  2. 2

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  3. 3

    大谷の今季投手復帰に暗雲か…ドジャース指揮官が本音ポロリ「我々は彼がDHしかできなくてもいい球団」

  4. 4

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  5. 5

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  1. 6

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  2. 7

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  3. 8

    女優・佐久間良子さんは86歳でも「病気ひとつないわ」 気晴らしはママ友5人と月1回の麻雀

  4. 9

    カンニング竹山がフジテレビ関与の疑惑を否定も…落語家・立川雲水が「後輩が女を20人集めて…」と暴露

  5. 10

    “下半身醜聞”川﨑春花の「復帰戦」にスポンサーはノーサンキュー? 開幕からナゾの4大会連続欠場