「スポーツ多刀流のすすめ」女子やり投げ北口榛花を育てた日大時代の監督が提言
陸上世界選手権(世界陸上=19日開幕、ハンガリー・ブダペスト)に出場する北口榛花(25)は、陸上競技の最高峰リーグ戦「ダイヤモンドリーグ」で今季2勝(通算4勝)を挙げ、6日にはドイツ・オッフェンブルクで開催された世界陸連コンチネンタルツアー・ブロンズのHylo Javelin Meeting Offenburgでも61メートル88を記録して優勝。目下、世界ランキングトップで世界陸上や来年のパリ五輪の金メダル候補になっている。
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■中学までは水泳とバドミントンを
北口は昨年の世界陸上(米オレゴン州ユージン)で、日本女子のフィールド種目史上初の銅メダルに輝き、一躍国内外から注目される存在になったが、やり投げを始めたのは旭川東高(北海道)に入学してから。中学までは競泳とバドミントンをやっていた。
「それが非常にプラスになっている」というのは、北口の日大時代の陸上部監督(投てきコーチ)だった小山裕三氏(現・佐野日大短大学長)だ。
「水泳のクロールで100メートル泳ぐときに肩を回す。日常生活であれだけ肩関節を大きく、長く動かすことはない。北口の肩関節が柔軟なのはその影響でしょう。また、水泳はやり投げでも重要な腹筋や背筋、体幹なども鍛えられます。バドミントンのスマッシュは、やり投げの振り切り、つまりフォロースルーの直前の動きに通じます。水泳とバドミントンをやっていたことが、やり投げを始めて急成長した大きな要因であるといえます。アテネ五輪ハンマー投げ金メダルの室伏(広治=48)も、成田高(千葉)に入学する前は混成競技をやっていた。父親の重信氏は、五輪代表4回、アジア大会5連覇、日本選手権10連覇で『アジアの鉄人』と呼ばれていた。父の影響でハンマーを投げたことはあったでしょうが、本格的に競技を始めたのは高校から。110メートルハードルや走り幅跳びの能力は抜群でしたから、下半身の強さなどがハンマー投げに生きました」
北口に話を戻せば、2019年からやり投げ王国チェコのデービッド・セケラクコーチに師事してから記録が急速に伸びだした。
「彼の指導では、やりを投げる練習は週に2回ぐらいと聞いた。バーベルを上げたり、ハードルを跳んだり、三段跳びのようなトレーニングが多い。どれもやり投げの動きにつながっている。やり投げは上半身と下半身の動きがまったく違います。右手でやりを持ち、助走は上半身の力を抜いて下半身主導で走る。下半身に余計な力が入ると、上半身も力んでしまい、やりは遠くへ飛ばせない。日大時代は、股関節を柔軟にするハードル跳びや縄はしごのようなトレーニングラダーを小刻みに跳ばせ、股関節の柔軟性や体幹の強さ、バランス能力を養うトレーニングも行った。下半身強化は地面からの反発を上方向に伝えるために欠かせませんが、当時の北口はこのようなトレーニングが好きではなかった(笑)。単身でチェコに行き、指導を受けてから結果も出ているので、今はコーチの言うことを素直に聞いているのでしょう(笑)」