吉田類 大衆酒場100選
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花街の美しき芸妓たちの夢の後先…
■品川亭 西新宿 新宿は中央公園を抜け、十二社通りを渡った西新宿4丁目の一角。かつて角筈十二社(つのはずじゅうにそう)と呼ばれ、明治時代から昭和の中頃まで花街として栄えたエリアである。昭和初め…
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魚河岸で40年、目利き主人の初鰹にうなる
■はなふさ 築地 日本一の魚河岸のある築地周辺は定食に寿司、居酒屋、レストランと魚介料理を自慢とする店がひしめいている。今宵の河岸は、市場の仲買人をして「旬の魚を今が食べ頃という時に食わせてく…
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黒塀の老舗酒場で徳利転がす夕べかな
■赤津加 秋葉原 エプロンにカチューシャの若い女性が「メイド喫茶、いかがですか?」とサラリーマンの袖を引き、外国人観光客がたむろする中央通りの往来を抜け、街の奥へと歩を向けると、黒塀に囲まれた…
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名物の串煮込みと肝っ玉女将のほほ笑みと…
■藤や 北千住 北千住で煮込みといえば、「大はし」と挙げる飲んべえは多いだろう。コクのある牛すじ煮込みは、「ホイきた!」と注文のたびに声を張る名物大将と共に知れ渡り、町の代名詞のひとつといって…
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下町ハイボール&絶品もつ焼きで幸せをかみしめ…
<三平 西小岩> 宵の口の京成小岩駅を出て、春の下町をのんびり行けば、ご同輩とおぼしき中年男が前を歩いている。柴又街道を渡り、駅前交差点のほど近く、「高い店」の「高」の字が逆さまになっている店…
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美しき女将の「一発」「二発」に顔を赤らめ…
■だるま 門前仲町 春の夕暮れ、飲み屋激戦区の門前仲町は、もう一杯ひっかけたとおぼしき飲んべえがひとり、ふたり。赤ら顔を照らすお天道様も「たまには明るいうちから飲んだって、いいじゃないか」と言…
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今の街には不似合いな、時代遅れの、あの酒場で…
■婆娑羅 三鷹 かつて国立に「文蔵」というもつ焼き酒場があった。高倉健主演で映画化された、山口瞳の小説「居酒屋兆治」のモデルとなった店だ。 映画では、健さんと加藤登紀子さんの夫婦が仲む…
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野毛の老舗人気店で、春の足音を感じる
■栄屋酒場(横浜・長者町) 横浜は京急の日ノ出町駅を出て、大岡川に架かる長者橋を渡って、2つ目の十字路を右に曲がると、渋い暖簾がはためいている……はずが、夕方5時の開店時間というのに、暖簾は出…
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花園神社の参道脇に酒の神が舞い降りた
■川太郎(新宿三丁目) どんな酒場だろうと、初めて暖簾をくぐる時は多少なりとも緊張する。それが神社の参道脇の暗がりにあるのだから、なおさらだ。 新宿は花園神社の一の鳥居を抜け、赤い二の…
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飲んべえの神様も笑う路地裏の繁盛店
<斎藤酒場 十条> 飲んべえが酒場に求めるものは酒だけじゃない。安くてうまい酒肴、肩肘張らずに楽しめる気安さ、女将が優しいといった居心地である。十条は駅前のロータリー脇の路地を入ってすぐの「斎…
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沖縄島んちゅの熱き心よ
<島 飯田橋> 東京のお伊勢さまこと、縁結びの神様として人気の東京大神宮のお膝元、飯田橋は富士見の一角に歩を進める。目指すは昭和36年創業の沖縄料理店「島」である。 引き戸を開ければ、…
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名物の合い鴨焼きで幕を開ける、魅惑の焼き鳥コース
<ほさか 新橋> 「ゆうべ閑古鳥が鳴いたと思ったら、今夜はしっちゃかめっちゃかなんだから。長年やってても、分からないもんだよ」 ご主人の保坂幸五さんは苦笑いを浮かべながら、もくもくと煙を上げ…
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こだわりの酒場空間で絶品もつにかぶりつく
■炭火焼 いっぱいやっぺ(国分寺) 国分寺は駅北口の商店街をズンズン進む。地名の由来にもなった武蔵国分寺跡のある、落ち着いた景観を楽しみにして来たが、大きな更地ができていて驚く。地上32階と3…
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ちゃんこ番として磨いた確かな腕が織りなす絶品の数々で、夢の世界へ
■炭火焼 玉秩父 吉祥寺 吉祥寺は駅北口を出て、線路沿いを西荻方面へそぞろ歩くと、左側に小さな飲み屋街がある。若者たちの喧騒から遠ざかり、こよいの河岸の暖簾をくぐって、引き戸を開ける。そして止…
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懐は寂しくても、明日は見えなくても…乾杯!
<酒蔵かっぱ(新橋)> 新橋は烏森口を飛び出すと、忘年会シーズン真っただ中の街はごった返していた。が、職場の仲間とパーッといこうというような華やぎというか、浮かれた顔は多くない。そういう時代な…
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日本酒の伝道師セレクトの極上の杯を受ける
■やきとり雅 荻窪 木枯らしの東京を中央線の車窓から眺め、荻窪駅で下車。西口から青梅街道を左へ歩くこと約7分、環八の少し手前の左側路地に真新しい白い看板を見つけた。この夏、西荻から移転してきた…
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芳醇な樽酒を飲むまでの、長く遠い道のりよ
■岩手屋(湯島) 「あの時はもう二度と、こいつを出せないんじゃないかって……、そう思いましてね」 湯島は天神下交差点を上野方面へ歩き、ふたつ目の路地を右へ曲がったところにある店のカウンターの…
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昼酒の聖地は生ビールとつまみで240円ナリ
■肉の大山(上野) 上野駅は中央改札から広小路口に出て、マルイ裏手のさくら通り商店街へ。この一帯は昼酒の聖地として知られていて、「立飲み たきおか」でジョッキをあおるご同輩や「もつ焼 大統領」…
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同好の士を集め、1日3時間の宴を開く
<ホッピー仙人 桜木町> 仙人といえば、人里離れた山奥の、そのまた奥に暮らし、道教の道(タオ)を究めた白ひげの長老というイメージだが、ホッピー仙人はどんな人物なのだろうか。 横浜は桜木…
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昭和のアーケード街、1000円札1枚で笑顔になる
<丸健水産 赤羽> 秋深き東京の夕日を追いかけ、郊外へと走る電車に揺られながら、行く末をまた、考えた。仕事、生活費、そして擦り切れそうな夢……。何ひとつ確かなものはなく、来年すら、やっていける…