これで認知症介護は怖くない
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便秘予防のために下剤を使うと「弄便」の被害が大きくなる
介護する家族がもっとも不快に感じるのは「便いじり行為」だろう。便を弄ぶと書いて「弄便」という。おもらしで床を汚すことも同じだ。家族は慌てて紙オムツをあてるのだが、今度は紙オムツの中に排泄した便をいじ…
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バリアフリーにすると変化についていけない当事者もいる
「せっかくバリアフリーにしたのに、認知症の父は歩きにくそうにしているし、何度かつまずきました。何のためにリフォームしたのやら……」 最近も近所の人からこんな嘆きを聞いた。 家族の誰かが…
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「行きたくない」とデイサービスを拒否するのは男性が多い
デイサービスには喜んで行く人もいれば、「あんなトコには行きたくない」と、かたくなに拒絶する人もいる。ずっと家で過ごせたらいいのだが、ヘタすると生活リズムが崩れたり、社会とのつながりが消えたりして孤立…
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薬の数を減らして調整すると暴言も暴行もピタッとやんだ
認知症になったら「暴れる」とよく聞く。実際、認知症について書かれた参考図書には、譫妄、睡眠障害、異食、徘徊などとともに「暴言・暴行」は「周辺症状」(BPSD)のひとつとされている。でも私は、認知症の…
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10分も記憶を維持できない人が昨日のことを覚えていた
「母さん、とうとう俺の顔も忘れたんです。介護していてもまるでアカの他人ですよ」 山崎雄二さん(仮名)は言う。認知症になった母親を介護していたが、最近は「あなた、誰?」とか、親戚の叔父さんに間違…
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「物盗られ妄想」ではなぜ家族が犯人になるのか
認知症の人によくある行動に「物盗られ妄想」がある。認知症の母親が、「財布がなくなっている。誰かに盗まれた」と言いだすケースなどがそうだ。 財布が見つからない時、「一緒に捜そう」と言ってくれた…
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認知症の家族を「頑張って最期まで介護する」は正しいのか
「ゆかいな認知症」(現代新書)を出版して以来、介護している家族からはメールや手紙をいただくことが増えたが、時々気になることがある。 「頑張ってお母さんを最期まで家で介護するつもりです」 …
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認知症で引きこもっていた人が外に出るにはきっかけが必要
「3年前に退職した父が、認知症と診断されたら家に引きこもってしまいました。どうすればいいのでしょうか?」 こんなケースが少なくない。私が知っている限り男性に多いようだ。とくに社会的地位が高い男…
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適当にあしらわず時間がある時ゆっくりと話を聞いてあげる
「何度も同じことを聞くんです。それも数分おきにです。なんとかなりませんか」 認知症になった母親を介護している女性からこんなことを聞いた。時間や今日の日付、食事のことなどが多いそうだ。介護する家…
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夕方になると「帰ります」と家を出てどこかに消えてしまう
ここが自分の居場所でないと分かったら、そこから逃げ出したいと思うのは私たちも同じだ。ただ認知症の人は、障害があるから帰れなくなるので「徘徊」と言われる。 「徘徊」にはさまざまな理由があって、連…
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認知症の当事者は本当に「あてもなく」歩くのだろうか
都内に住む西光男さん(仮名)は、「徘徊」を繰り返す認知症の母親に困り果てていた。私が母親を取材したのはそんな時だ。 「徘徊」とは、辞書には「あてもなくうろうろと歩き回ること」と書かれている。こ…
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「がんで死ぬのはいいが、認知症だけはなりたくなかった」
認知症だから何も分からないだろうと勘違いして、モノのように扱われたら、当事者は落ち込み、暴言や暴行といった方法で抵抗する。 それでも「認知症の人がその程度で傷つくような感情を持っているの?」…
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認知症の人はつらさや寂しさ、悲しさをより敏感に感じている
佐藤さんが、つい「励ましの言葉」を言うのは、心の中で「認知症になったら、多少強く言っても分からないだろう」と思っていたからだ。 しかし、認知症の人には、こうした言葉は「叱られている」と受け止…
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「しっかりしてよ」励ましの言葉が認知症の人を傷つける
家族が犯しやすいミスに「言葉」がある。何げなく使った言葉で、認知症の本人が人格を壊されるような傷を負うこともある。 佐藤さんが実家に戻ってきた頃、父親はまだ足腰も元気だった。頑固とはいえ、自…
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まるでそこにいないかのように無視され孤独を噛みしめる
佐藤さんは「困った認知症の父親」について私にこう言った。 「父親が、理由もなく茶碗を投げたり、大声で罵ったりするんだ。症状が進行したんだなぁ。そろそろ施設を探さないと……」 その可能性…
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介護のために同居を始めると父親との関係がギクシャクした
具体的な例を紹介する。 佐藤啓介さん(仮名)は出版社に勤務する40代のサラリーマン。父親が認知症になってから、すっかり人生が狂ってしまった。 実家は両親2人だけの生活で、年老いた母親…
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症状が進んでも認知に障害があるだけでそれ以外は普通の人
認知症の人とどう接するかとは、「認知症の人をどう見ているか」という問題でもある。 「もはやぼけて人間ではない」と見ているなら、認知症の人は人間として扱われないだろう。20年ほど前に、ある精神病…
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「どうせ分からない」小ばかにしていると信頼は生まれない
「認知症の人とどう接したらいいの?」とよく尋ねられる。実は私にもマニュアルがあるわけではなく、いってみれば五感で接しているというのが正直なところだ。 知人の小田尚代さん(詩集「感語詩」の著者)…
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症状が進んでも人間の感情的な部分はちっとも変わらない
「本人に聞けって? 認知症になった人にどうやって聞けばいいの?」 そんな質問が聞こえてきそうだ。前回では全国の認知症の人から話を聞いたと書いたが、その中には記憶が5分も維持できない重度の方もい…
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症状は人それぞれ違うのに安易にネットに頼るから間違える
初めにお断りしておくが、私は介護の現場で働いたことはない。若年性認知症と診断された兄が2013年に亡くなったのをきっかけに、全国を回って数十人の認知症当事者に話を聞いたのだが、これから書こうとしてい…